第10話 キリマの試練


主人公=泣き虫ドラゴン

(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)



「それじゃあ、僕の暮らす沼も創造できるんですか?」


「できるさ。でもお前は、ワシに会いたいという気持ちが強かった。

だからこうして、ここにいる……」


「これから僕は、どうすれば……」


「いい質問だ。創造の実を食べたからには、沼を探すだけではもったいない。

お前には、試練を受けてもらうぞ。お前の声は、魅力的だ。その声をもっと活かすためだ」


こうして泣き虫ドラゴンは、

森の精キリマの試練を受けることになりました。


キリマから出された試練とは、

はるか雲の上にあるキリマ山の頂上へ飛ばずに歩いて行き、

そこで待っているものに、歌を聴かせるというものでした。


このままでは、いつまで経っても自分が暮らせる沼には、

辿りつけそうもありません。泣き虫ドラゴンは、この試練が終わったら沼の場所を教えてもらう約束を、キリマと交わしました。


「なあに、お安いご用さ」


という、森の精キリマの軽い返事を聞くと、

泣き虫ドラゴンは、キリマ山のなだらかな坂を登り始めました。


君は、山を登るドラゴンなんて、聞いたことがありますか?

あの大きくてかたい体で、長い長い登り坂を登るなんて、

きっと すごく根気のいることでしょう。


でも、泣き虫ドラゴンは、あきらめませんでした。

もちろん、沼のありかは知りたいところだったのですが、

それ以上に、好奇心の向くまま、気の向くままに生きるのが大好きなドラゴンだったのです。


キリマ山を登り始めた泣き虫ドラゴンの目の前に、

一羽の鳥が舞い降りてきたのは、それからまもなくのことでした。


この山に住む『呼び泣きの鳥』という、けたたましい声でなく鳥でした。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る