第11話 呼び鳴き鳥が泣く時
主人公=泣き虫ドラゴン
(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)
ダチョウほどもある大きさ、ふさふさした毛並のお腹、
瑠璃色の羽根を持ったその鳥は、泣き虫ドラゴンにこう問いかけます。
「わたしは呼び泣き鳥。君は、わたしを泣かせるほどの何かを持っていますか?」
「…………」
泣き虫ドラゴンは、何と言えばいいのか分かりません。
「わたしは泣きたいのです。思いっきり!
この数十年、わたしを泣かせるほどの方は現れませんでした。
君も、同じですか。君は、何かを持っていますか?
持っているなら、それでわたしを泣かせて下さい」
泣き虫ドラゴンは、困りました。そう言われても、何も思いつかないのです。
僕にできることってなんだろう? ただ、鳴くことぐらいじゃないか。
そうだ、よし、ためしに鳴いてみよう。
「ジョルディール。ジョルディール」
泣き虫ドラゴンは鳥に向かって、鳴きました。
「へぇー。君は不思議な鳴き声ができるんだね。
ようし、今度はその声でわたしを呼んでみてくれないか」
「ジョルディール。ジョルディール」
泣き虫ドラゴンは、呼び鳴き鳥のことを呼んでみました。
「ジョルディール。ジョルディール」
「うんうん。いいねぇ。何だか君を信じたくなってきたよ」
「今度は、このわたしの羽根の音といっしょに鳴いてみてくれないか」
呼び鳴き鳥は、泣き虫ドラゴンの目の前で、
瑠璃色の羽根を開いて、しきりに、バタつかせました。
羽根から風が生まれ、泣き虫ドラゴンの顔を吹き抜けて行きます。
泣き虫ドラゴンは、羽根に合わせて、鳴いてみました。
「ジョルディール。ジョルディール」
泣き虫ドラゴンが鳴くと、呼び鳴き鳥がそれに合わせて、羽根を舞わせます。
すると、羽根に合わせて、また泣き虫ドラゴンが鳴きます。
まるで、呼び鳴き鳥の羽根が、歌っているようです。
「ジョルディール。ジョルディール」
不思議です。鳴けば鳴くほど楽しくなってくるのです。
呼び鳴きの鳥の羽根が、泣き虫ドラゴンの鳴き声に合わせて、
綺麗なウェーブを描きます。
泣き虫ドラゴンの鳴き声が、羽根のウェーブに乗って、
風と共に、空をめぐります。
その時です。
呼び泣き鳥が、けたたましい声をあげました。
瑠璃色の羽根は、たたまれ、ただ、クチバシを空に向けて、
声が何度も上がります。
それはまるで、泣いているようでした。
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