第22話 キリマ山の頂上
主人公=泣き虫ドラゴン
(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)
太陽が真上に昇る頃、泣虫ドラゴンは、
とうとう、山の頂きにたどり着きました。
その土地は、スッポリと雲の中に隠れていて、
太陽の光が射さない場所でした。
ひっきりなしに吹く風が、霧を激しく流しています。
泣虫ドラゴンは、そんな霧がとぎれた時に見える、
わずかな視界を頼りに進みました。
ふいに、泣虫ドラゴンの頭の中で、キリマの声が、こだましました。
「最後の試練は、キリマ山の頂上へ行き、
そこで待っているものに、歌を聴かせることだ」
泣虫ドラゴンは、絶え間なく流れて行く霧に目をこらしながら、つぶやきました。
「こんなに寒くて凍えそうなところで、誰が待っていると言うのだろう?」
踏みしめる地面は、硬い万年雪でおおわれて、凍っていました。
ようく目をこらして見ると、ここは、広々として、
一面真っ白な円い形をしています。
泣虫ドラゴンは、身体全体に、少しずつ氷の粒がはりついてくるのを感じながら、
必死に、待っている者を探しました。
待っている者とは、泣虫ドラゴンが歌を聴かせてあげる者のことです。
果たして自分にどんな歌が、歌えると言うのだろう?
泣虫ドラゴンには、
自分にはとうてい待っている者を喜ばせる歌なんか出てこない気がしました。
待っている者に会って、感じるままに歌うことが、
今の泣虫ドラゴンにとっては、
大岩を動かすことのように、難しく感じました。
そう、それもそのはずです。
泣虫ドラゴンの頭から背中へと、うすい氷が張り巡って行こうとしていました。
このままでは、泣虫ドラゴンは、氷ついて、動けなくなってしまうでしょう。
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