第20話 シッポの先に輝く球


主人公=泣き虫ドラゴン

(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)



泣虫ドラゴンの耳に、鳥たちのけたたましい鳴き声が、聞こえてきました。

それが、やがて、獣たちの遠吠えに変わりました。


泣虫ドラゴンのシッポを打ち鳴らす地響きと共に、

獣たちの遠吠えは、雄叫びに変わり、それが、物凄い数の大合唱となり、

泣虫ドラゴンの背中に、せまってきました。



その時です。

泣虫ドラゴンの振り下ろしたシッポの先が、まぶしいほどに輝き、

オレンジ色の光の球が現れました。


時が止まったかのように、何もかもがスローモーションになり、

獣たちの声さえ、聞こえなくなりました。


泣虫ドラゴンは、自分のシッポの先に輝くオレンジ色の球を、

しばらく、見つめました。


懐かしい輝き。


懐かしくて……そして何だか、親しみ深いその輝きに、

思い出のヒモがほどけていきました。


泣虫ドラゴンは、自分を写し出した不思議な鏡を見ているかのようでした。

その鏡の中に、ありとあらゆる自分が映し出されました。


ああ、今まで忘れていたこと。


本当は分かっていたこと。


泣虫ドラゴンは、シッポに灯ったオレンジ色の輝きを見つめながら、

自分を丸裸にしていく、それはつまり、自分を食べちゃう感覚でした。


まるごと、飲み込んで、噛み砕いて、味わって……


その後時間をかけて、お尻から出して、自分の形に戻していく。


そんな行為が終わった後には、もう泣虫ドラゴンには、

シッポで輝くオレンジの球をどうすればいいのか、

痛いほど分かるような気がしました。


泣虫ドラゴンは、大きく深呼吸すると、

目を閉じて、鋭く、シッポを降り下ろしました。


すぐさま山をも揺るがすような地響きがして、

オレンジ色の光の球が、物凄い勢いで地面に吸い込まれていきました。


泣虫ドラゴンの意識は、いつの間にかオレンジ色の光の玉に宿って、

一緒に、深く深く、もぐっていきました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る