第2話 カバさんがやってくる


主人公=泣き虫ドラゴン

(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)

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君は、泣き虫ドラゴンを知っていますか?



この世で一番、ドラゴンっぽくないドラゴンって言えば、

アフリカでは、知らないものはいないくらいでした。


泣き虫ドラゴンは、

サバンナの奥の沼地に暮らしていました。


大きくて、かたくて、紫色の胴体。

短い四本の手足、とんがってぶんとしなるシッポ。


ギザギザな歯と、大きな口。

そして、銀の翼に赤い瞳。


すがたかっこうは、他のドラゴンたちと同じでした。


でも、泣き虫ドラゴンには、たった一つ、

他のドラゴンたちとは、違うところがありました。


それは、鳴き声です。


月夜になると、


「ジョルディール」


と鳴き声を上げるのです。


それで、いつしかみんなから、

泣き虫ドラゴンと呼ばれるようになったのです。



ある月夜のこと、

いつものように沼のほとりで泣き虫ドラゴンが鳴いていると、

どこかから、大きなカバがやってきました。


「やあ、泣き虫ドラゴン。君の声を聞いてやってきたんだ」


「やあ、カバさん。会いにきてくれて、ありがとう」


「ところで、君が狩りをしているところは、見たことないな。


君のギザギザな歯や、するどいシッポが、何のためについていると思うんだい?」


「何のためだろう? 考えたこともなかった」


「きまっているじゃないか、そのギザギザな歯は、魚や動物たちを腹いっぱい食べるためさ。そのシッポだって、ぶんとしならせて、思いっきりぶつけてやれば、誰だってイチコロさ」


「そうだったんだね。でも、僕にはそんな気は起こらないなあ。

たとえば、そうだねぇ……うんうん、そうだ」


泣き虫ドラゴンは、何かを思いついたように、歯をカチッと鳴らし、

カバの目の前にやって来て、


「君の大きな歯を磨くのに、僕のシッポは、なんて便利なんだろう?」


泣き虫ドラゴンはそう言うと、ぐるりと後ろを向いて、緑の藻(も)がいっぱいついたカバの歯に、とがったシッポの先を近づけました。


「まった! 泣き虫ドラゴン。そんなことを言って、本当はそのとんがったシッポで、わたしの口を一突きして、食べてしまうつもりなんだろう? 」


「けっして、そんなことはありません。この声に誓って」


「ジョルディール。ジョルディール」


泣き虫ドラゴンの鳴いている声を聞くと、不思議なことに、カバは信じてみようという気持ちになりました。



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