第2話 カバさんがやってくる
主人公=泣き虫ドラゴン
(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
君は、泣き虫ドラゴンを知っていますか?
この世で一番、ドラゴンっぽくないドラゴンって言えば、
アフリカでは、知らないものはいないくらいでした。
泣き虫ドラゴンは、
サバンナの奥の沼地に暮らしていました。
大きくて、かたくて、紫色の胴体。
短い四本の手足、とんがってぶんとしなるシッポ。
ギザギザな歯と、大きな口。
そして、銀の翼に赤い瞳。
すがたかっこうは、他のドラゴンたちと同じでした。
でも、泣き虫ドラゴンには、たった一つ、
他のドラゴンたちとは、違うところがありました。
それは、鳴き声です。
月夜になると、
「ジョルディール」
と鳴き声を上げるのです。
それで、いつしかみんなから、
泣き虫ドラゴンと呼ばれるようになったのです。
ある月夜のこと、
いつものように沼のほとりで泣き虫ドラゴンが鳴いていると、
どこかから、大きなカバがやってきました。
「やあ、泣き虫ドラゴン。君の声を聞いてやってきたんだ」
「やあ、カバさん。会いにきてくれて、ありがとう」
「ところで、君が狩りをしているところは、見たことないな。
君のギザギザな歯や、するどいシッポが、何のためについていると思うんだい?」
「何のためだろう? 考えたこともなかった」
「きまっているじゃないか、そのギザギザな歯は、魚や動物たちを腹いっぱい食べるためさ。そのシッポだって、ぶんとしならせて、思いっきりぶつけてやれば、誰だってイチコロさ」
「そうだったんだね。でも、僕にはそんな気は起こらないなあ。
たとえば、そうだねぇ……うんうん、そうだ」
泣き虫ドラゴンは、何かを思いついたように、歯をカチッと鳴らし、
カバの目の前にやって来て、
「君の大きな歯を磨くのに、僕のシッポは、なんて便利なんだろう?」
泣き虫ドラゴンはそう言うと、ぐるりと後ろを向いて、緑の藻(も)がいっぱいついたカバの歯に、とがったシッポの先を近づけました。
「まった! 泣き虫ドラゴン。そんなことを言って、本当はそのとんがったシッポで、わたしの口を一突きして、食べてしまうつもりなんだろう? 」
「けっして、そんなことはありません。この声に誓って」
「ジョルディール。ジョルディール」
泣き虫ドラゴンの鳴いている声を聞くと、不思議なことに、カバは信じてみようという気持ちになりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます