第13話 奴隷商の息子と枢機卿と神官
「初めまして。シュルト奴隷商会の次期店主のアベルと申します」
「ん? 子供ぉ?」
僕を一目見るや否や、眉間にしわを寄せる太ったおっさん。
「どうして子供がここにぃ? 聖女様が話があると聞いているんだけどぉ?」
「はい。僕が話があるので訪れてきました。聖女様はシュルト奴隷商会の奴隷ですので」
「むっ……きみねぇ……子供だから許されると思ったら大間違いだよぉ? 聖女様を奴隷にするなんて、信じられないからねぇ?」
まぁ、彼の言う事はごもっともではある。
ただエリンちゃんが『聖女』になったのは、奴隷になった
厳密に言えば、聖女様を奴隷にしたわけじゃない。
「誤解があるようですが、僕達は何も聖女様を奴隷にしたわけじゃありません。彼女は聖女様になる
「それが問題なのさぁ~どうして分からないかな~聖女様は教会にとって――――ごほん。民に取って偉大なる存在よぉ?」
このおっさん。今、教会に取って
「ならどうして最初から助けてくださらなかったんですか?」
「何をぉ!?」
おっさんを言い負かせようとしたら、口喧嘩になってしまった。
「ごほん。ペイリース枢機卿。ここに喧嘩しに来た訳じゃありません。彼の話をしっかり聞き届けてください」
太ったおっさん――――もとい枢機卿という教会内部でも一番高い地位の人だった。
彼の後ろに立っていた鋭い表情を見せる神官が宥めてくる。
「ガイア神官ん? 俺に指図かえ?」
「いえ。ですがこのまま口喧嘩を続けてしまって、聖女様を
「むっ~それはそうだねぇ~」
「ですから、まずは座って挨拶から始めましょう」
「はいはぃ~」
これは後ろの目が鋭い神官の方が厄介だな。
目の前の太ったおっさんがどうやって枢機卿になれたのかは、想像は付くけど、決して能力で上ってきたようには見えない。
それに反して後ろに立っている神官はとても優秀に見える。
「俺はぁペイリース枢機卿だぞ~」
「ペイリース枢機卿ですね。僕が今回面接を依頼したアベルです」
僕の声を聞いた後ろの神官の眉がぴくっと動いたのが視界に入った。
「それで? 聖女様を売っ――――渡――――救ってくれる気になったのかぁ~?」
くっ……落ち着け。アベル。
おっさんの言葉に一々反応していたら相手の思うつぼだ。
この会談を進める本体は、まぎれもなく後ろに立っている神官だ。
「いえ。その気は全くありません」
「なんじゃとぉ!?」
「それに関しては、既にエリンちゃんから
「じゃあ、今日はなんで来たんだよぉ!」
ちょっと怒っているな?
「今日は奴隷に対する王国法について相談に来ました」
そう話すと、またもや後ろの神官の眉がぴくっとなって、あからさまな反応を見せる。
来るなら僕ではなく、店主であるお父さんが来ると予想していたのだろう。
という事はだ。教会も今の奴隷達の現状を知っているんだと思われる。
後ろの神官がポーカーフェイスじゃなくて良かった~。
「奴隷の王国法ぉ~?」
「はい。奴隷に関する最低限の人としての王国法は、王国ではなく教会側からの制定だと聞いております」
「そうだね~昔の事だけどねぇ」
「その法を変えて貰いたいんです。大至急に」
「むっ?」
「ごほん。失礼。どうして大至急変えたいのか、どのように変えたいのかお聞きしても?」
後ろの神官も枢機卿を待てずに口をはさんできた。
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