第28話 奴隷商の息子の新しい事業
「がーはははは!」
お店にブライドさんの豪快な笑い声が響き渡る。
後ろにいた3人の傭兵団員もブライドさんに続いて笑い出した。
たった4人なのに、笑い声が大きすぎて耳をふさがないと耳が痛くなりそうだ。
「面白れぇじゃねぇか。小僧」
「ごほん。ブライド殿。その方は小僧ではありません。アベル様です」
「ん? そうだったな。悪かったな、アベル」
「いえいえ。こちらとしても、ブライドさん程の方と組めるのは嬉しい誤算です」
「くっくっ。面白れぇ事になってきたな」
どうやら僕が提案した事にブライドさんは乗り気みたいで良かった。
僕が提案したモノ。
それは傭兵団をシュルト奴隷商会が直接雇い入れる事だ。
ただ、最近は奴隷レンタルにより、戦力増強要員や
ブライドさん達は普段から戦力増強要員として働くつもりだったが、あまりにも安くなってしまって働けないのが、今回訪れた経緯だ。
そこで、僕が着目したのは、傭兵団というノウハウを持ったブライドさんを雇い入れることによって、今までできなかったことができること。そうする事によって、傭兵団に掛かる費用はかなり負担になるものの、新しい事業を始める事ができるようになる。
僕がブリオン傭兵団を受け入れて始める新しい事業は――――貴族や大貴族を相手に『指定依頼』となるものができるようになる。
実はシャロレッタさんと婚約者になり、シアリア男爵家を通じて多くの貴族の方々に会う機会が増えていった。
最初こそ、どこぞの骨かも分からない僕がシャロレッタさんの婚約者になったのだから、シアリア男爵家にものすごい批判が来ていたそうだ。
特に選ばれなかった家からの圧力は凄かったという。
それでも男爵が「王国最高の奴隷商会となるシュルト奴隷商会の御曹司」と宣伝してくれて、逆に僕に興味を持つ貴族が段々増えてきたそうだ。
それもあってか、僕に一目会おうとシアリア男爵家を訪れて来る貴族も多くて、シャロレッタさんに会いに行く度に新しい貴族を紹介されていた。
そこで僕が一つ思ったのは、この世界の貴族は高額商品を手に入れるためには、自ら確保している戦力を使い取りに行かせるかオークションを利用して最上位冒険者達が手に入れた宝を購入する流れとなっている。
どうして直接冒険者に依頼を出さないかという疑問があったのだが、実は冒険者側からそういう依頼を一切受けてないそうだ。
その理由としては、例えば高級宝石を取りに行って失敗した場合、冒険者として信頼度も下がり、報酬も出ず、冒険者達は働き損になるから受けない。そうだ。
それもあって貴族達は目の前に現れた高級宝石をお互いに競って手に入れるシステムになってしまった。
僕が今回着目したのは、そこにある。
たまたまうちを訪れたブリオン傭兵団は元々戦いにノウハウがあり、強敵を倒してその素材を取ってこれる力と経験がある。
そこにシュルト奴隷商会の奴隷が加われば、もっとスムーズになるはずだ。
僕がブリオン傭兵団に提示したのは、
・これからシュルト奴隷商会の所属となって貰い、毎日過ごせる住まいや食事を提供し、固定給料を払い続ける。
を条件に、
・普段から奴隷達の訓練を担当して貰う。
・『指定依頼』があった場合、全力で遂行して貰う。
である。
ただし、『指定依頼』は必ずしも成功するわけではない。
むしろ失敗が多いと言っても過言ではない。
だから、失敗したからと言って、何かデメリットがあるかというと、全くない。
ではシュルト奴隷商会としての利益はどこにあるのか。
まず、『指定依頼』の多くが失敗するのだが、成功した際に得られるモノは多い。
それに失敗する一番理由は、遠征に行った際の資材だ。
街から離れた場所まで遠征に行かなくちゃいけないのだが、そこで何日も寝泊りをするための資材が必要なのだ。
それをシュルト奴隷商会の荷物持ち部隊が解決する。
さらに、依頼に向かってから道中で倒した魔物の素材なども大きな問題となる。
そのまま捨ててはもったいないので、それを回収する荷物持ち部隊も同行する予定だ。
ブリオン傭兵団が狩りを行う際の戦力増強もうちの奴隷達が補えるし、彼らが戦っている際に拠点となる場所を守るのも奴隷達で補える。
つまり、シュルト奴隷商会だけでブリオン傭兵団自体の戦力を増強し、戦いを行って貰い、『指定依頼』をクリアして貰う事にするのだ。
それを聞いたブリオン傭兵団の皆さんは、大声で笑い、僕の提示を快く承諾してくれた。
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