第30話 奴隷商の息子の平穏

「アベル様」


「うん?」


「シアリア男爵家から一目置かれたのは分かりましたが、随分と話しが急展開したように感じますね」


「急展開?」


「ええ。いくらシアリア男爵様がアベル様を気に入ったとしても、ここまでやってくれるのは不思議に感じます」


「えっ!? え、えっと。それは僕が――――――シャロレッタさんと婚約したからかな?」


「!? そ、それは本当ですか!?」


「え!? う、うん。そういえば、まだ話してなかったね。先日正式に婚約を交わしたよ」


「まさかそういう話しになっているとは…………さすがアベル様というべきですが、シアリア男爵様の先見の力は本物ですね」


 そ、そうなのかな?


 僕としては、ただの奴隷商会の息子だから、この婚約は不思議でしかないんだけどね。


「という事は………………ふむ」


「どうかしたの?」


「…………エリンはこの事を知っているのでしょうか?」


「えっ? エリンちゃん? 最近会っていないというか、何処にいるのか分からないから、多分知らないと思うけど……?」


「なるほど。分かりました。その件に関しては俺が動きましょう」


 ???


 エリンちゃんがどうにかしたのかな?


「それはそうと、『指定依頼』ですが、いつから開始する予定でございますか?」


「う~ん。まずは開始するまでに予行練習を行ってみて、行えるなら男爵様に相談する予定だよ」


「かしこまりました。早速やる気になったブライド殿が訓練を賄ってくれそうですね。俺はメンバーを集める事にしましょう」


「ありがとう」


「アベル様。ヴァレオ。情報は俺は集めておきましょう」


 僕達の話を聞いていたギスルが情報を集めてくれるという。


「とても助かるよ。難易度は程々のモノを一つ、すこし難し目を一つお願い」


「かしこまりました。早速出掛けてきます」


 ギスルが情報収集で出掛けて、訓練所では訓練が始まったらしくて、戦力増強組の訓練が始まった。


 窓から見ていると、それに興味を持った子供達も遠目から訓練をみながら、自分達も訓練を始めた。


「ヴァレオ。悪いけど、子供達の面倒も見て貰えない?」


「構いません。ブライド殿はああ見えて面倒見が良い方ですから、俺が背中を押してきましょう」


「ありがとう」


 訓練を真似ている子供達にヴァレオが向かい、彼らに何かを話すと、一緒に練習所に向かった。


 何かを話すとブライドさんが大声で笑って、子供達も一緒に訓練を始めた。


 急激に増えた奴隷達の運用も見え始めた。


 いくら王国から買収額を出して貰ったとはいえ、彼らを養う額は頂けてない。


 こうして奴隷達の戦力が上がれば、奴隷堕ちした子供達の受け皿にもなれて凄く助かる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る