最終話 奴隷商の息子と楽しい日々

 新しい事業のため、多くの奴隷達が『レンタル』から訓練に切り替えた。


 ブライドさんのおかげで、彼らの戦闘力も格段に向上した。


 このまま卒業しても、冒険者としてやっていけそうなくらいにはね。


「では、今日は初めての『指定依頼』の予行練習だね。でも予行練習で全てが分かるし、練習とはいえ本番と変わらないので、頑張ってほしい! でも絶対に命を大切に、失敗を恐れず帰ってきてほしい。ブライドさん。ヴァレオ」


「「はっ!」」


「成功にばかり目がいって、命を落としたら意味がないよ? これは絶対ね!」


「「はっ!」」


「では1回目の『指定依頼』。『銀翼蜥蜴トカゲの翼』を手に入れるのが依頼だよ!」


「「かしこまりました!」」


 僕とギスルが一緒に作った指令書を二人に渡して、初めての『指定依頼』が始まった。


 『ブリオン傭兵団』と『ゼラニウム傭兵団』は基本的に分かれて動く事になるけど、予行練習中は一緒に進む事になる。


 ただ、狩り自体は交互に行い、狩りの近くで拠点を構えて、周りの魔物の素材を集めたり、拠点を守ったりする予定になっている。


 みんながシュルト奴隷商会から向かうのを見守る。


「遂にですね」


「はい。どうか全員無事で帰って来てほしいです」


「大丈夫です。アベル様の想いはみなさんにしっかり伝わっているはずですから。危なくなったら逃げてくれると思います」


「そう信じて待ちます」


 シャロレッタさんと共に、『指定依頼』に向かうみんなが視界から消えるまでずっと見守った。




 それから二十日後。


 少し凛々しくなったみんなが帰って来た。


「みんな……! 誰一人欠けずに帰って来てくれてありがとう!」


 その日から三日ほどゆっくりして貰う。


 ブリオン傭兵団もゼラニウム傭兵団も大成功で、誰一人命を落とす事なく、目的の品に加えて、目的地の周囲から取れる素材も沢山持って帰ってくれた。


 宴会ではブライドさんが得意げに旅の話をしてくれた。


 僕が憧れていた勇者としての旅にも似た話に夢中になって聞いていた。


 異世界ならではの想像もつかない世界が――――。




 三日後。


 二度目の『指定依頼』の遠征に向かって貰った。


 前回の『銀翼蜥蜴』はランクでいうならCランク魔物で、彼らにとっては容易な相手だ。


 だが、今回の『レインボーゴーレム』はAランク魔物で、最高Sランクまである上列でも上から2番目の強さを誇る。


 Aランク魔物はそれこそ大きな騎士団で討伐をするのだが、今のうちはそれに近い戦力が整っている。


 強力な魔物ということで、二師団ある傭兵団の共闘での依頼になる。


 どうか無事で帰って来ますようにと祈り続けた。




 あれから三十日後。


 シアリア男爵家に遊びに行っていた僕は、ギスルから帰ってきたとの連絡を貰い、すぐに帰還した。


 興味を持ってくれたのか、男爵とシャロレッタさんがついてきてくれて、みんなで王都正面入口から待つ事にした。


 男爵の厚意により、城壁の上から彼らの帰りを見守る。


 水平線の向こうには大勢の人々と、多くの素材を積み上げた荷馬車が見え始めた。


 その一番中央には、お日様の光を受けて、虹色に輝く大きな鉱石が見え始めた。


「す、すごい! あれが『レインボーゴーレム』!」


 Aランク魔物だからこそ、滅多に目にすることができない姿に、大勢の王都民が彼らの帰りを見守った。


 彼らが王都に入るや否や、大きな歓声があがる。


「ブライドさん~! ヴァレオ~!」


「アベル様。ただいま帰還しました。死者0。負傷者は多数いますが命に別状はありませんし、自力で歩けます。今回の依頼も無事に終わりました」


「っ! あ、ありがとう! みんな! 無事に帰って来てくれて、本当に……ありが…………」


 ずっと心配していたからか、言葉が詰まって、気が付いたら僕の頬に大きな涙が流れた。


 そんな僕を帰って来たばかりのヴァレオとブライドさんが励ましてくれる不思議な状況となった。




 その日。


 『レインボーゴーレム』を被害者なしで倒したシュルト奴隷商会の名は王国全土に知れ渡った。


 それと婚約を交わしたシアリア男爵家を窓口に『指定依頼』も始める事となり、シュルト奴隷商会の需要は王都内にますます広まる事となった。


 だがこの時の僕はまだ知らなかった。


 まだ世界には僕達に悪意を向けている人々が大勢いる事を。


 さらに僕達を待ち受けている大きな問題がまだまだ残っている事を。






 異世界に生まれて勇者になると信じて疑わなかった僕が、10歳で『無能』を授かり……ただのほら吹きだとして周りからバカにされるようになった。


 でも僕に愛情を注いでくれた両親のおかげで、挫折する事なく、次の夢に向かって全力で向かう事ができた。


 きっと勇者になれたら僕が未だかつて見た事がない冒険が待っていたのだろう。


 でも奴隷商人となった僕は、また新しい目標ができた。


 それはやがて世界を変え、僕にまだ見た事もない世界をたくさん見せてくれる事になるだろう。


 こうして僕は異世界で新しい生を受け、奴隷商の息子として楽しい毎日を送っている。






――――【完結】――――


 『奴隷商の息子に転生して異世界の奴隷仕組みを根本からひっくり返してクリーンな仕事を目指します』を最後まで読んで頂きありがとうございます。


 こちらの作品は「楽しくお仕事 in 異世界」中編コンテストのために書き下ろした作品になります。


 という事もあり、中編で一旦終わらせて頂く事になりました。


 作者として奴隷商息子が未完成のまま、WEB投稿を終える事は残念に思いますが、多くの読者様から支持頂いたこの作品だからこそ、必ず別な形でお届けできると信じております。


 面白かった。応援したい。という方はぜひこちらの作品をフォロー並びに★でも応援してくださると嬉しいです。


 コンテストの結果が良きモノとなったら、小説内にて案内致しますので、フォローはそのままにしてくださると嬉しいです!



 これからも作者の御峰は、より面白い作品をお届けできるように日々執筆を励んで参ります。


 他の連載作品及び完結作品も多数ありますので、覗いてみてくださると嬉しいです!


 作者フォローをしてくださると新作の通知や近況報告の通知もいきますので、ぜひフォローしてください!


 ではここで最後になりますが、最後まで読んで頂き応援してくださった多くの読者様、心より感謝申し上げます! ありがとうございました!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

奴隷商の息子に転生して異世界の奴隷仕組みを根本からひっくり返してクリーンな仕事を目指します 御峰。 @brainadvice

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ