ミナヅキ
※一気に三話更新(3/3)
時間は少しだけ巻き戻り、高度も少しだけ上に上がる。
「狛彦っ! そんな! どうしてっ!」
この結果は予想していなかったのだろう。自分達でやっておきながら驚きを露わにする狛彦の姉を代表してデリカがそう叫び、割れた窓に駆け寄った。
「大丈夫ですよ。とりまるですから」
その窓から入り込む風で乱れてしまった髪を手櫛で梳きながら鈴音はその背中にそんな言葉を投げた。
「大丈夫な訳ないでしょ! 幾らわたしたちでも、この高さじゃ――」
「アリスとウサギが居る以上、問題ありませんよ。とりまるは絶対にあの二人を死なせませんから」
「――~~~~っ。あなっ、あなたに何が分かるって言うんですかっ!?」
「とりまるのことが。貴女よりは」
分かりますよ、私? と鈴音が言う。
それを向けられたデリカはさっきを込めて鈴音を睨みつけた。
「? 何でそんなに殺気だって――もしかして、とりまるが私の隣にいるのが気に入らないんですか?」
「――あなたが、狛彦の隣にいる! の!」
「どっちでも良いじゃないですか。大した違いは……あぁ――」
ここ、と鈴音は思ったのだろう。
「同種のメスなら優しくして貰えると思ってたのに当てが外れたから八つ当たりですか?」
言いながらテックコートの前を開く。
中に着ていたパーカーにも手を掛ける。
そうしてから襟元に手を入れる。
数で負けている。
実力は――どうなんですかね? とりまると同じなら少し拙いです。
ならば少しでも動揺して貰えるのなら儲けモノだから遠慮なく、容赦なく鈴音は行く。
「残念でしたね」
ぐい、と服をはだけさせて――白。鈴音の白い肌と――赤。それは、まるで――
「彼、
キスマークのようだった。
「……もしかして獣化、出来ないんですか?」
だったらごめんなさい。あそこまで煽る必要は無かったですね、鈴音。
白いテックコートに返り血を付けた鈴音の足元には五人の少女が倒れていた。血を流していた。死んでも良いや。それ位のつもりでやったので、そう言う結果になった。殺す気は無かったが、生かすことも意識しなかったので、
死ぬかもしれない。
生きられるかもしれない。
「……」
凄い目でデリカが睨んで来る。先程の挑発のこともあるし、殺しておいた方が良いかもしれない。そう判断した鈴音がデリカの細い首に右足を乗せる。体重を掛ける。
「! ――――――――――――――――――――――!」
吐き出される無音。吐き出される苦悶。殺す。その意志に晒されたデリカがもがき、足掻く。
「……んふ」
それを見て鈴音の口から笑いが零れる。
奪う。その愉悦に。その予感に笑いが零れる。そして、止め――
「……はい、どうしましたか、とりまる?」
を刺そうとした所で通信が入る。
やはり死ななかったらしい。軽功が自分よりも上手いことは知っていたが、この高さを跳んで本当に生き残る辺り、アレはやはりどこかおかしい。
「えぇ、こっちは無事ですよ。お義姉さんたち、ですか? 虫刺されを見せたらブチ切れたので床で寝て貰ってます。――貴方が私の心配をしないで下さい。それは私がやることで――」
会話をしながらデリカから足を退かす。
いけない。
「私達が逃げる街……ですか? ありますよ。
その瞳が――
「ミナヅキ。私の、私の家が持ってる街に招待しますよ、とりまる」
ボロボロの狛彦を映した。
あとがき
大丈夫? 君、ラスボスじゃない?
そんな不安を抱きつつ、剣客ウルフ第一部完! です。
二部は『ミナヅキ』です。
途中で作者が死にかけて更新途絶えた挙句、大幅改稿と言う舐めた真似をしたにも関わらず、最後までのお付き合い、本当にありがとうございます! 応援してくれる皆様のお陰で何とか区切りにもって来れましたー。
で。
お知らせ。
明日か明後日にカクヨムのサポーター限定になってるペリカンフォーラムとおまけの短編を放り込んだら一旦完結にさせてもらいます。
脳内にしかないプロットではいつもの三部構成をやるきなので続きを書く気はあるのですが、一応。
理由?
人間はいつ死ぬか分かんないし、今のポチ吉なら猶更だからだよ!
……ぶっちゃけ、原因不明だったから根治してないんですよ。「生きてるからよし!」の現場猫メソッドで解放されただけなのです。そんな訳で暫くは区切りの良い所で完結にする完結詐欺で行かせて下さいませ。
まぁ、今んとこはめっちゃ健康だけどね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます