ルランドの決意(中編)
「見つからなかったんだな……」
私が力なく王宮に戻って来ると、ずっと待っていてくれたのか、グランデルが私に声をかけてくれた。
「うん」
グランデルに声をかけられると、収まっていたはずの涙が再び溢れ出した。
「あれ、おかしいな、もう涙は枯れたと思ったんだけど……」
そう言いながら、私は涙を拭った。
「ラティリス……」
「え?」
急にグランデルが私を抱き締めた。
「私ではダメか? 私ではルランドの代わりにはなれないのか?」
「それって……」
気がつかなかった。
グランデルが私のことを好きだったなんて。
でも。
「ありがとう。私のことを大切な仲間と思ってくれているんだよね」
私は敢えて知らないふりをした。
そして、私の背中に回していたグランデルの手を解いた。
「ち、ちが……」
「分かっています。ですから、もうそれ以上は……」
私はグランデルに言葉の続きを言わせなかった。
酷いことをしているのは分かっている。
でも、グランデルの想いを知ってなお、ちらつくのはルランドの顔だけだった。
もっと上手な断り方はあったのかもしれない。
しかし、今の私にはそこまでの余裕はなかった。
「……そうか……」
グランデルが悲しそうに呟く。
その表情が、ルランドの顔と重なった。
ああ、いなくなったルランドも、きっとこんな表情をしていたのだろう。
私と出会った男性は、みんな不幸になっていく。
もう誰も好きにならない方がいい。
そんな風にも思ってしまう。
「どうやら、私ではラティリスを笑顔にはできないようだ」
「グランデル……」
「ルランドとはまだ短い付き合いだが、無責任な男ではない。必ず戻って来る。だから、そんなに泣くな」
そう言いながら、グランデルは私の頭を撫でた。
「はい」
本当に優しい人。
エスカーネがグランデルを好きになった理由がよく分かる。
出会う順番が違っていたら、もしかしたら私も好きになっていたのかもしれないね。
そんなことを思いながら、荒れていた私の心が少し静まったのを感じていた。
◇
「ラティリスの元を離れてから、もう一ヶ月か……」
俺は亜人大陸を旅しながら、ある
「それにしても、こんな場所で魔剣の
「ふむ、だいぶ魔剣を使いこなせるようになったようじゃな」
「お陰様で」
魔剣を使いこなす訓練をしていると、ダークエルフの古老ダレフが声をかけてきた。
俺は今、旅先の秘境で偶然出会ったこのダレフから魔剣の使い方を教わっている。
「ラティリス、待っていてくれ」
必ず強くなって、少しでも早くラティリスのところへ戻る。
その想いだけで、俺は昼夜を問わず一心不乱に訓練を続けていた。
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