魔王三天王サビスル(中編)
「うぉぉぉぉぉぉ!」
ルランドがサビスルを力で切り飛ばし、無理やり私達との距離を開けさせた。
「グランデル様!
エスカーネが駆けつけて、魔法でグランデルの治療を始めた。
「
治癒のスピードを早めるため、私も水系の回復魔法を唱えた。
グランデルが早く回復すれば、もしかすると戦いに加勢できるかもしれない。
私達が戦闘に加わるよりも、その方が二人の戦力になると判断した。
「俺だけでは勝てないのは分かっている……。お前と力を合わせても難しいか?」
「正直、難しい。でも、この状況だと、やるしかないよね」
ルランドの問いに対して、エアルはそう答えた。
「ああ、ラティリスのために」
「ラティのために」
「
ルランドが魔剣に火炎を付与した。
「
「フ、こざかしい。
エアルが魔法で無数の風刃を作り出してサビスルに放ち続けるが、サビスルは魔術で黒い結界のようなものを作り出して全ての風刃を防いでいる。
「連撃!!」
エアルの風刃はおとりだったようだ。
ルランドが火炎付与された魔剣による連撃をサビスルに繰り出している。
「フフ、魔剣を少しは使いこなせてるみたいね。私が並の魔族だったら結果は違ったかもしれないけど……。でも、残念。その程度の力では、私には通用しないわ」
サビスルは、右手から放たれている魔術でエアルの魔法を防ぎ、左手から放たれている魔術でルランドの攻撃を防いでいる。
「同時に二つの魔術を使えるなんて……」
私は思わず絶句した。
早く、早く!
私は焦る気持ちを必死に抑えながら、グランデルの治癒に全力を注いだ。
「そ、そんな……」
私達は完全に実力差を
グランデルの意識すら戻らない短い時間で、ルランドとエアルはサビスルによって致命傷を与えられていた。
「フフ、風の精霊がいたことは誤算だったけど、それも含めて十分に楽しませてもらったわ。特に人間の坊やはまだまだ成長過程だったみたいだから、ここで殺してしまうにはもったいない気もするけど。仕方がないわね。だって、私ってそんなに気の長い性格じゃないし、美味しい物は今食べたいもの」
「そうはさせないわ!!」
私は叫びながら、ルランドとサビスルの間に立った。
「ラティリス、ダメだ……。お前だけでも逃げてくれ……」
瀕死の状態にも関わらず、ルランドは必死に立ち上がろうとしていた。
「ルランド、気持ちは嬉しいけど、私にはそんなことできないわ」
「いいわよ、いいわよ、もっともっと盛り上げて!! これこそ、死に
「狂ってる……」
サビスルの言動を見て、その言葉が最初に出てきた。
「どうして、そんなに非道になれるの? あなたは人の死を何とも思わないの?」
「思わないわ。だって、満たされない心があったら、何かで満たしたいと思うのは自然なことでしょ? 私にとっては、それがたまたま、誰かを殺すということだっただけ。そのために
「……理解できないわ」
前半の内容はまだ分からなくもないが、後半の内容に至っては共感できるものは何一つなかった。
「それは残念。価値観の相違ね」
何故理解できないの?
そう言いたげなサビスルの表情に、私は心底ゾッとするのを感じていた。
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