ドワーフ王国(前編)
「ところで、そのハリネズミは何なんだ?」
「あ、これは、さっきそこで拾ったハリネズミのハーリって言うの、可愛いでしょ」
『ここで話し合ったことは誰にも話さないように。もし誰かに話せば、約束を交わした仲とはいえ、命はないと思え』
デミストに口止めされたので、私はエアルの力で逃げたということにした。
本気で命を奪おうとしているとは思えなかったが、外に漏れては困る情報を私が聞いてしまったから念を押したのだろう。
因みに魔獣ハリネズミちゃんの名前は、ルランド達と合流する少し前に思いつきで決めた。
「ま、まあ、可愛いとは思うが……」
「フッ、フッ!」
「俺を挑発しているのは気のせいか?」
何故か、ハーリがルランドを挑発している。
「どうしたの? ハーリ、よしよし」
「ピーピー」
私が撫でると、満足そうな鳴き声に変わり、穏やかな表情になった。
「ルランドの顔が怖かったんじゃない?」
「俺、そんなに怖い顔してるのか?」
自覚なかったんだ。
「うん、少しね」
かっこいいとは思うが、キリっとした顔をしているので、
「そ、そうなのか……」
私がそう言うと、ルランドは思った以上に精神的打撃を受けていた。
◇
「ここがドワーフの王国なのね」
私達は、ようやく当初の目的であったドワーフの王国へと到着した。
デミストと出会ったことが不幸中の幸いだったのか。
ブラグラ王子の兵士達と遭遇することなく無事にたどり着くことができた。
「ワッハッハッ! やっと故郷に帰って来れたわい」
故郷に戻れて、ワグリナは嬉しそうだ。
そう言えば、私もしばらく故郷に戻れていないなぁ。
両親は元気に過ごしているだろうか。
しばらく出かけて来ると伝えて、長く帰れていないから、きっと心配しているに違いない。
「しかし、魔族の現状に関しては、嬢ちゃんが直接聞き出したようじゃし、お主達がここまで来た意味はなかったかもしれんな」
デミストから亜人大陸を侵略している魔族の状況は聞かせてもらえたので、デミストの怒りに触れない範囲で、仲間とは情報共有した。
「私は剣の修理と
「おお、それはもちろんさせてもらおう」
そう言って、グランデルはワグリナに剣を預けた。
「ルランドに渡した魔剣は、まだ修理は必要ないと思うが、魔剣の簡単な使い方は教えておいた方がよさそうだな」
「ああ、頼む。まだ、ただの剣としてしか使いこなせていないようだ」
グランデルとルランドはデミストとの戦いで、このままではいけないと感じているようだった。
「焦る気持ちは分かるが、旅の疲れもあるじゃろう。訓練は明日からにして、まずは美味しいものでも食べようではないか。それに、ここには温泉もある。食後は温泉にでも浸かって、ゆっくりと身体を休めてくれ」
「それもそうだな」
ルランドは私の方をチラッと見ながら答えた。
私の身体を気にしてくれているのだろう。
「温泉があるんですね」
ワグリナの魅力的な話に、私は思わず再確認をしてしまった。
「ああ、あるぞい。ドワーフの建築技術を駆使した最高の温泉がな」
ワグリナは得意げな表情でそう答えた。
「ふふ、それは楽しみです」
久しぶりの温泉。
しかも、建築を得意とするドワーフが造った温泉となれば、期待せざるを得ない。
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