魔王三天王サビスル(前編)
「ダークエルフ軍とサビスルの魔族軍が対峙している間に、急ぎましょう!」
私達はエアルの風魔法によって飛行しながら、グランデルがいると思われる本陣へと向かっていた。
「あとどれくらいで着きそうだ?」
「あと少しで着くと思う」
ルランドの質問に、エアルが答えた。
「グランデルを救出したら、速攻で逃げるからね。絶対にサビスルと戦おうなんて思ったらダメだよ」
「分かってる」
ルランドが雪辱を果たすことに走らないように、エアルが事前に打ち合わせした作戦を共有して念を押した。
「ホントかなー。デミストに負けたことをずいぶん気に病んでたみたいだったけど」
「前から気になっていたが……、お前の俺への扱い酷くないか?」
「当たり前でしょ。僕の大切なラティの心を奪ったんだから」
「……そうか、それは悪いことをした」
「あのー、本人がいる前で私の話をするのやめてもらえませんか?」
恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
「すまない、つい熱くなってしまったようだ」
「僕もゴメン」
まあ、二人とも私のことを大切に想ってくれているのは分かるから、悪い気はしていないけど。
「あそこにグランデル様がいるのですね!」
本陣が見えたので、エスカーネが声を上げた。
グランデルを早く救いたいという強い気持ちが伝わってくる。
私達は本陣から少し距離を開けた場所に降り立った。
「おかしいわね。魔族の数が少ない気がする」
私達はなるべく大きな音を立てないように魔族を倒しながら、グランデルが捕えられている荷馬車へと向かっていた。
「グ、グランデル様!」
グランデルを見つけると、エスカーネは悲鳴に近い声を出した。
グランデルは両手をしばられた状態で腕を吊るし上げられていた。
全身に無数の傷も負っている。
「人質と言っておきながら、こんな仕打ちをするなんて……」
サビスルの
「待っててね。今助けるから」
私はグランデルをしばっているロープをナイフで切り始めた。
「に……ろ……」
私に気がついたグランデルがうめき声を上げた。
「気がついたのね。酷い傷を負っているわ……。後で回復魔法で治すから、逃げる間は少し我慢してもらうわよ」
「ダメだ……、ここから離れ……」
「え?」
「あーあ、種明かしをされるのは困るわね、グランデル皇太子」
私が戸惑っていると、グランデルの陰からサビスルが現れた。
「フフフ、こんな簡単な罠にかかるなんてね。
サビスルが不敵な笑みを浮かべながら魔法を唱えると、周辺が黒い障壁で覆われた。
「……これはまずいよ、ラティ。サビスルを倒さないとこの壁から出られない」
精霊であるエアルが焦っている様子から、危機的な状況だということが十分過ぎるほど伝わってきた。
「意志が強くて私の魔法でも操れなかったけど、人質としては役に立ったみたいね。グランデル皇太子の性格から、この皇太子を見捨てない誰かが助けに来ることは簡単に予想できたわ。だから、その想いを利用して罠を張らせてもらったの」
「くっ!」
どうやら、私達はまんまとサビスルの罠にかかってしまったようだ。
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