ルランドと私 追憶編4
「ラティリスを誰が襲ったのか分かったのか?」
俺はラティリスを襲った犯人を諜報員に探させていた。
「元婚約者の王子かと思いましたが、どうやらその王子の幼馴染が命を狙ったようです」
「やはり、そうだったか。結果的に、ラティリスが我が国に来てくれたから、それまでのラティリスへの仕打ちは不問に
ラティリスが王国を追放された経緯は既に調べてある。
「では、監視を続けつつ、何か事を起こしそうな時には、その王子の幼馴染を
「ああ、そうしてくれ」
今回の事でも分かったが、ラティリスの元婚約者は相当無能な皇太子のようだ。
「長年、隣国からは一方的な因縁をつけられ続けてうんざりしていたが、今回の事件は、逆に好機なのかもしれないな……。王家の悪い噂を、少しずつ広げさせておくか」
無理やり王家を追い出したとなると民の印象もよくないだろうが、民の願望を叶えるという名目ができれば、今の王家の位置を奪うことはそう難しくないだろう。
ラティリスの件と合わせて、王家の悪い噂も広げるようにと諜報員に指示を出した。
「ちなみに、これは、ラティリスの元婚約者に、俺が嫉妬しているからというわけではないぞ」
俺の変な噂が広がっても困るからな。
一応、念を押しておかねば。
「はい、分かっております」
「ならいい。では、任務を続けてくれ」
◇
「ところで、いつから、俺のことを名前だけで呼ぶようになったんだ?」
「言われてみれば確かにそうですね。気がつかない間に、名前だけで呼んでしまっていました。今後は気をつけて、ルランド皇太子と呼ばせていただきます」
無意識だったとはいえ、失礼なことをしてしまっていた。
「いや、そのままでいい」
「いえ、他の従者の方々の視線もありますので、さすがにそういうわけには……」
「それは俺が説明しておくから、そのまま敬称なしで呼んでくれ」
「それでも少し気は引けますが、ルランドがそうしてほしいのであれば、そうします」
「ラティリスとは、身分関係なく対等に付き合いたい。俺はそう思っているんだ」
「分かりました。でも、皇太子であるルランドを名前だけで呼ぶなんて、まるで恋人同士みたいですね」
「あ、まあ、その何というか……」
「え?」
冗談で言ったつもりだったのだが、本当の理由はそれだったの?
「そうだったんだ……」
「ち、違うぞ、違うからな!」
ルランドは必死に否定しているが。
それは肯定してるのと同じだから。
「へぇー、そうなんだー」
「だから、違うって!」
私が棒読みで答えると、ルランドは更にムキになって否定し始めた。
そんなルランドが愛おしく思えて、私が微笑んでいると。
「あんまりからかうなよ。俺が本気なのは知ってるだろ?」
急にルランドは真面目な顔になって、私を壁に追い詰めた。
「まっ、そこがラティリスの魅力なんだけどな」
「なっ!?」
ルランドがそう言って、私の頭を優しく撫でたので、私は思わず声を上げた。
ルランドの手の温もりを通して、私を大切にしてくれている気持ちが伝わってくる。
王子に婚約を破棄されて心が傷ついていたはずなのに、ルランドによって、いつの間にか私の心の傷は癒されていた。
だから、できることなら、このままずっと。
ずっと、ルランドの傍にいさせてください。
私は心からそう願った。
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『ハマったVTuberが義妹だと知ってしまったので幼馴染に相談したところ、幼馴染もVTuberをしてみたいという話になって、二次元にしか興味がなかったはずの僕の心がかき乱される』
という作品を、今はメインに書いているため、ここからは不定期投稿になります。
悪役令嬢として追放された私が敵国だった皇太子と愛を紡ぐ 夜炎 伯空 @YaenHaku
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