ルランドと私 追憶編3

「よかった。無事にルランドの目が覚めて……」


 ルランドは、宮廷医師と宮廷魔法師の力によって、何とか一命を取りとめた。

 しかし、著しく体力が低下していたため、ルランドは三日三晩眠り続けていた。


「ああ、目が覚めた時、好きな女が目の前にいるという光景は悪くないものだな」


「な、何を言ってるんですか!?」


 ルランドの目が覚めてほっとしたのも束の間、いきなりルランドから告白された。


「……今回のことで分かったんだ。伝えたいことはその時に伝えておかないと後で必ず後悔すると。嫌だったか?」


「い、嫌ではありませんが……」


 突然告白されて、驚かされた。


「そうか、それならよかった。生死の境を彷徨さまよっている時に、どうしても気になっていたことがあったんだ」


「……何が気になっていたのですか?」


「意識を失う時に、ラティリスが何か大切なことを言っていた気がして、ずっと気になっていた。あの時、何と言っていたんだ?」


「あ、あれは」


「あれは?」


「あの雰囲気だったから言えただけで、今、突然、聞かせてほしいと言われても言えません!」


 聞こえていなくて良かったような、少し残念だったような。

 どちらにしても、あの時のことを思い出すと、恥ずかしさで顔が真っ赤になる。


「フ、そうか。残念だが、それは今後の楽しみにとっておくとしよう。それよりも、ずっと、俺の傍にいてくれたんだな。ありがとう」


「そんなの当たり前です。私のせいでルランドが死にそうになったのですから。もう、私を庇って、あんな真似はしないでくださいね。自分の命をまず大切にしてください」


「それは無理な話だ。俺は君に怪我を負わせたくない」


「その気持ちはありがたいですが、ルランドが傷ついている姿を見る方が、私にとっては辛いんです」


「いや、俺は自分が傷つくより、君が傷ついている姿を見る方が辛い」


「ルランドは、この国の皇太子なんですから、自分だけの身体ではないんですよ」


「ラティリスこそ、いつか俺の妃になる身なのだから、自分だけの身体ではないぞ」


「むー、ルランドは頑固ですね」


「それはラティリスもだろう?」


 そう言い合って、しばらくにらみ合った後。


「フハハ」


「ふふふ」


 私達は声を出して笑い合った。


 ルランドとのこんな日々がずっと続けばいいのに。


 私は心の中で、そう強く願った。


 あれ?


 そう言えば、さっき言い合っている時に、何か重大なことを言われた気がするんだけど……


 気のせいかな?


 何故か、私の心はモヤモヤしていた。

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