女神の試験4

「ラティリスは、そういう選択をしたんだな……」


 女神の塔に戻って、ファレス様の話を仲間達と共有し終えると、ルランドが一言そう言った。

 私と違う選択をしたからか、ルランドは複雑な心境の面持ちをしている。


「私はまだ魔族に会ったことがなかったから、それが幸いしたみたい」

 

 ルランドは過去に魔族と対峙たいじしたことがある。

 私も同じ経験をしていたら、ルランドと同じ選択をしていたかもしれない。 


「まさか、魔族の正体が同じ亜人種だったとはな……。だとしたら、私が今まで必死に戦ってきた敵は……」


 グランデルが衝撃的な真実に打ちのめされている。

 魔族は最初から魔族という種族だと誰もが思っていたのだから仕方がない。


「あまり自分を責めないでください。たとえ同じ亜人種であったとしても、攻めて来た相手を倒さないわけにはいかないですよね」


 今まで倒した魔族の中には、同族のダークエルフもいたに違いない。

 でも、襲ってくる敵と仲良くなんてできないのだから、そのことで、グランデルが罪を感じる必要はない。


「……ありがとう、ラティリス」


 グランデルは私と話をして、少し心が落ち着いたようだ。


「グランデル様……」


 エスカーネがグランデルをじっと見つめている。


 あ、これは勘違いされた可能性が……

 後で誤解を解いておこう。


「ラティリスの言う通りじゃ。仲間の命を奪おうとする者は同族だろうが関係ない。戦うしかないじゃろう。それよりも、ここでの用は済んだのじゃろう。早くワシの王国へ向かおうではないか」


 ワグリナは早く故郷に戻りたいようだ。


「そうね、そうしましょう」


 色々と回り道をしてしまったが、私達はドワーフの王国へと再び歩み始めた。



「さっき確認し損なったが、女神から授かった力があれば、弟のブラグラを元に戻せるのか?」


 ドワーフの王国へと移動している最中、グランデルが私に尋ねてきた。


「そうらしいのですが、女神の力を試したわけではありませんので、必ず元に戻せるとはまだ言えません」


「それもそうだな。女神の力を使いこなせるようになったら、また教えてもらえるか?」


「もちろんです」


「ただの女ではないと思っていたが、まさか女神の力まで使えるようになるとはな」


 ルランドが会話に加わってきた。


「ふふ、もしかして、私の才能に驚いてるの?」


「そうだな、まるで俺の知ってるラティリスではないみたいだ……」


「ルランド?」


 私は冗談のつもりで言ったのだが、ルランドは何故か真剣に受け止めてしまったようだ。


「あ、いや、何でもない、気にしないでくれ」


「そう?」


 ルランドは気にしないでくれと言ったが、その表情が私には妙に気になっていた。

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