女神の試験1
「それにしても、ラティリスが風の精霊シルフを従えているとは思わなかった」
女神の塔へと移動している途中、グランデルが私に話しかけてきた。
「あ、エアルは従えているんじゃなくて友達なの。ね、エアル」
「そう、ラティと僕は友達なのさ」
自然が好きな両親と登山をした時、好奇心が強かった私は両親の忠告を忘れて、道を外れた場所に迷い込んでしまった。
その時に偶然出会って、私を助けてくれたのが風の精霊エアルだった。
山の別荘で過ごしている間、エアルと楽しく遊んでいたのだが、いつまでも山にいるわけにはいかないので、別れの時はすぐにやってきた。
今までずっと一人で山に住んでいたからか、私と離れるのが急に寂しくなったようで、エアルは私と一緒に山から下りることを決めた。
私といると山から下りても何故か居心地はよいらしく、エアルとは今でも一緒に行動を共にしている。
「着きました。ここが女神の塔です」
女神の塔へと案内してくれていたエスカーネがそう言った。
目の前には古代遺跡のような塔がそびえ立っている。
「塔の中に入るとすぐに試験が始まるけど、誰が行くのかな?」
エアルが私達に尋ねた。
「私は当然行かせてもらう」
「でしたら、私も行かせてください」
グランデルが塔に入る決意をすると、エスカーネも手を上げた。
恋の力は偉大である。
「私も行きます。ファレス様に会えるかもしれないですし」
グランデルの弟を助けたいという純粋な気持ちもあるが、女神ファレス様に会ってみたいという単純な好奇心もあった。
「それなら、俺も行く」
私を心配してなのだろう、ルランドも手を上げた。
「四人が試験に挑むということだね。みんな一緒には戻って来られないから、ワグリナはここで待機していてもらえるかな?」
「分かった。試験を乗り越えられなかったとしても、ワシが塔の前でお主達の帰りを待っておるからな。安心せい」
ワグリナはそう言って、塔の前に腰かけた。
「それじゃあ、案内するからついて来て」
エアルに誘導されながら、私達は女神の塔の中へと入った。
「中は意外に何もないのね」
塔の中は単純な構造になっていて、ただ広い空間があるだけだった。
「塔の中にファレス様がいるわけじゃないからね」
「あ、そうなんだ」
塔の中に住んでいるのかと思っていた。
「みんな、広間の中央に集まってもらえる? そこでファレス様の試験が受けられるから」
エアルに言われて、私達は広間の中央に集まった。
「準備はいい?」
「はい」
私が返事をすると、みんなも頷いた。
「そろそろ始まるよ」
エアルがそう言い終えると、塔の天井から光が下りてきて、私達はその光に包まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます