女神の試験2

「何も見えない」


 女神の塔の中で包まれた光が消えると、真っ暗で何も見えない世界になった。

 辺りを見回すが、やはり何も見えない。


 しばらくすると、今度は世界が明るく照らされ始めた。

 徐々に光が強くなり、眩しいと思った瞬間、私の身体は炎に包まれた。


「熱っ! ……くない?」


 身体が燃やされる。

 そう思ったのだが、実際は炎の中にいるにも関わらず、まったく熱さを感じなかった。


「こ、この世界は……」


「今見ている世界は、魔族が世界を支配した未来だよ」


 絶望的な光景に圧倒され、ただただ呆然としている私に、エアルが声をかけて説明をしてくれた。


 破壊つくされた街に、焼きつくされた森、逃げ惑う人間や亜人が次々に殺されていっている。

 その光景は、あまりにも悲惨で、本物の世界ではないと分かっていたとしても、手で目を覆いたくなるほどだった。


「これが、魔族に支配された後の世界……」


 この光景が、現実にも起こり得る未来の世界だとしたら、なんと悲惨な世界なのだろう。


 

「次は亜人だけになった世界だね」


 エアルがそう言うと、目の前に広がっていた世界が急変した。


 今度の世界は、魔族が支配した世界とはまるで別世界のように、穏やかな世界が広がっていた。

 自然豊かな土地が広がり、各種族の亜人達がそれぞれ過ごしやすい土地で、のどかに過ごしている。


 しかし、そこに人間の姿はなかった。


「一見、平和そうに見えるけど……」


 私にはその世界に違和感を何故か感じていた。



「最後は人間だけになった世界だよ」


 目の前の世界がまた急変する。


 人間だけになった世界の未来は、極度に発達した文明が広がっていた。

 使われている道具が何かも分からなかったが、今の世界からは想像もつかない、便利な物に溢れているようだった。


 しかし、そこには亜人の姿はなく。

 魔族がいない世界にも関わらず、人間同士の争いは続いていた。


「それはそうよね……」


 魔族の問題が起こる前から、私達は隣国間で争い合っていた。

 たとえ文明が発展していったとしても、人の心が成熟していかないと、同じような争いが繰り返されるだけ。



「ラティ、君はどの世界を望むのかな?」


 異なった三つの世界の光景を見終わった後、エアルが私にそう質問した。


 暗闇の中、目の前には光る道が枝分かれして続いていた。


 最初に枝分かれしているのは、魔族がいる世界と魔族がいない世界。

 次に枝分かれしているのは、人間だけの世界と亜人だけの世界。


「まずは簡単な選択だよ。魔族がいる世界と魔族がいない世界の分かれ道。これは、もうどっちの道を行くか決まってるよね」


「……ええ……」


 私の選択は……

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