花精の森の記録（断片）

　ホモ・サピエンスなどセキツイ動物は存在せず、植物や菌類、無セキツイ動物と、それぞれの種や属の象徴たる妖精たちの、存在する場所で紡がれる物語を集めたものです。その場所は森を中心として、妖精たちが共同生活しており、独特の死生観や信仰など文化を持っています。
　彼女らは――皆、乙女の姿をしているゆえに、この三人称を使用しますが――主に植物と菌類に対し、無セキツイ動物というようなコミュニティを形成しているようです。そのせいか、主に草花の精と昆虫の精の間で、ときどき戦争が発生しています。妖精たちの詳しい生活や戦争の様子など文化・歴史は、物語として記録されていれば、皆さんも知ることができるでしょう。その記録の形式は短編や掌編小説、詩などが主となります。ただし、断片的な記録も多く、その取得や編集は難航し…続きを読む