自由詩:羽散らしのオルセトルム

風切る羽

の瞳は幾百いくひゃく

青空をめたよう区切られて

幾千いくせん幾万いくまん花精かせいを映す

地をける音はいかづちうな

空を舞う音はいなづまはじ

乙女の気配を風は運んで

花の精たちの震えは止まらぬ

どれほどの蜜をは飲んだのか

どれほどの魂を星とのぼらせたか

知らぬ花精の味はなく

散らぬ花は数えるほどか

土舞う戦場いくさばに高く笑い

乙女を千切ちぎいつくす


先陣せんじん切る羽

其の体は一枚の

岩石をまとうよう硬質で

花精の手にはそうつらぬけぬ

地をさませる濁流だくりゅう

空をく様は流れ星

乙女の声を風は運んで

虫の精たちの震えは止まらぬ

どれほどの血を彼はすすったのか

どれほどの魂を星と昇らせたか

同郷どうきょう虫精ちゅうせいさえよく喰らい

同胞どうほうさえも彼を恐れる

死のかおる戦場に悲しみもなく

すべてを引き裂き喰いつくす


休まぬ羽

其の四肢ししは星空の

運命さだめのように包み込み

乙女たちは逃げられぬ

地にみるかおりは夜の星

空にける薫りはまばゆ星芒せいぼう

乙女の食欲を風は運んで

星々の震えは止まらぬ

どれほどの星芒が彼に向いているか

どれほどの魂が彼をきざんでいるか

天すらその姿をおぼ

千もの魂は背にかれる

夜の戦場に怒りもなく

食欲のままに喰いつくす

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