自由詩:黒呪のフリティラリア

戦場いくさば二輪にりん乙女おとめ

小さき純潔じゅんけつのレウコリリオン

黒呪こくじゅのフリティラリア

純潔は雲のごとき

あわく白いころもをなびかせ

黒呪は夜のごとき

深く黒い衣をなびかせ

二輪で虫精ちゅうせい蹂躙じゅうりん

しかれど一輪に散る運命さだめあり

快晴のいくさ

彼の羽散はちらしの強者つわもの

純潔は足をうばわれ

抵抗ていこうもせず身をささ

の顔実に勇ましく

運命を受け入れ顔も崩れぬ

甘美かんびなる蜜みる時

黒呪は白き衣の舞うを見て

羽散らしを追う

しかれど復讐ふくしゅうげられぬ

終らぬ黒き星芒せいぼうのはじまり


戦場に舞う一輪の乙女

黒呪のフリティラリア

きレウコリリオン

純潔を雲におもい出し

淡く消えゆく様を見て

黒呪は闇夜やみよを想い出し

深くよみがえ黒光こくこうを見て

二輪で虫精を蹂躙す

然れど一輪に散らぬ運命あり

死ねぬ呪い

彼の羽散らしさえいどまぬ

一度ひとたび命をわしたならば

運命を忘れ虫精は死す

逃げても交わせばかわせぬ呪い

呪いを知って誰も挑まぬ

乙女は羽散らしを追おうとも

強者は黒き衣の舞うを見て

黒呪と交わさず逃げる

それゆえ復讐は遂げられぬ

終らぬ黒き星芒は燃え続ける


森で孤独となる一輪の乙女

黒呪のフリティラリア

純潔の死も乙女の呪いと

花精にこぼす者あり

ゆえに誰しも乙女に近寄らず

ことを交わすことなし

然れど黒星くろぼしの光に悲しみはなし

白き衣の一片いっぺん

愛し恋して抱きしめて

甘美なる夢を見て眠る

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