自由詩:多腕のエウカリプトゥス

勇猛果敢ゆうもうかかんな花たちの

強者つわものと命わす地に

隻腕せきわんながらしたたかに

枯れも知らず

散るも知らず

我がかいなを奪わんと

セファロテスを追う乙女あり

朱石しゅせきの腕切りと呼ぶ虫精ちゅうせい

追えど交わせど戻らぬ腕に

安らかなる怒りを燃やし

幾多いくたの虫は星と輝く

しかれど腕の戻ることなく

乙女の身は星芒せいぼうと散る

散れど日を幾多も数えぬままに

隻腕ままに地へかえ

おもいもなきはずなれど

彼の虫精とのいくさを望む

彼の身は幾度いくたび散ろうとも

彼の魂は戦場いくさばに踊る


森に身置かぬ木精もくせい

微笑ほほえむ戦の休息きゅうそく

傷負いながら柔らかに

眠りを知らず

終わりを知らず

友の腕を奪われんと

虫精を狩る乙女あり

彼を多腕たわんと呼ぶ虫精を

還せど潰せど失われゆく四肢しし

静かなる怒りを燃やし

幾多の乙女は星と輝く

しかれどその花の還ることなく

花精の想いは星芒と散る

散れど日を幾多か数えし時に

散りし日の影ままに地へ戻り

木精の影を知らずとも

彼の隻腕にいこいを覚える

彼の身は幾度邂逅かいこうせども

彼の魂は花精と語る


腕の行方ゆくえを知らずとも

彼のひとつの唇は

彼の名ごとく友と戦の

彼ほど多くの言の葉がしげ

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