自由詩:羽なき癒し手のアキレア

羽なき背に地の星々を負い

白きかいないだくのは

いやしの喜び

苦痛くつう愉悦ゆえつ

戦場いくさば帰りの花たちの

浅き傷に熱き癒しを

深き傷に燃える再生を

木々の隙間

光射す林床りんしょう

草々くさぐさの甘きに居場所をかま

流れに角なき角岩かくがん

肌でこするがごとき笑声しょうせい

果てまで届く重き響きには

蜜流す乙女の魂を

宿る秋風あきかぜ震わせ冷やし

細き指先で薬葉やくばでる

運命さだめに傷つける乙女たち

アキレアを知らぬ花はなし


羽なき背に戦地の乙女を負い

長き腕に抱くのは

消えゆくぬくもり

てんあおおも

戦場ける花たちの

死せる傷にあたたかき蜜を

散りゆく傷跡にみる涙を

木々なき草原

にぎわう戦場の

花々のからきに場所なく彷徨さまよ

雨になめらかな水晶を

で撫でるような笑声の

澄み力なく塩辛しおからき響きには

蜜失う乙女の魂を

宿る春風はるかぜ温め沈ませ

やわき指先でほお撫でる

運命に死せる乙女たち

アキレアを知らぬ花はなし

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