自由詩:速き華のケラソス

はやき乙女は美しく散る

長き薄桃うすももの髪をなびかせ

強者つわものに蜜香らせ

地を風のごとく

切れゆく髪が散るのも知らず

薄桃が戦場いくさばいろどるのも知らず

舞うよう虫精ちゅうせいと命をわす

雨雲あまぐもかおいくさにて

両のかいなを失えど

星芒せいぼうに死す運命さだめなし

春に舞い散る美しき花

春の刹那せつなの美しき夢


動かぬ乙女は時を待つ

長き焦げ茶の髪をらし

森の深きに身を隠し

のぼる日をいくつも数え

いずれその身が色づくのを知り

しなやかな腕の戻るのを知り

遠く花精かせいことわさぬ

枯葉の香る林床りんしょうにて

ただ身を石にして沈もうと

天に枯れる運命なし

森に眠れる色なき木

森の沈黙ちんもくの長き夢

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る