自由詩:大いなるクエルカス

褐色かっしょくの肌におもいをきざ

星々を見守みまも賢者けんじゃ微笑ほほえ

林床りんしょう鳴らす花たちの

無邪気むじゃきを静かに笑いつつ

なだたしなうなづいて

幾程いくほど春を数えたか

もっとも高きその背は

戦場いくさば帰りの目印めじるし

森の癒しの目印で

乙女の家の目印だった


硬き肌にいこいを刻み

星明かりを守る賢者の頬笑み

花盛はなざかりの乙女たちの

美麗びれいまぶしく笑いつつ

ながめ確かめ語らって

幾程夏を数えたか

もっとも長きそのあし

しげる枝の象徴しょうちょう

あふれる緑の象徴で

暑き繁栄の象徴だった


不朽ふくつの想いに時を刻み

せる身見守る隠者いんじゃの微笑み

星ばかり見る花たちの

恐れを運命さだめと笑いつつ

おさくくうつむいて

幾程秋を数えたか

もっともあざやかなるその髪は

めぐる四季の表象ひょうしょう

近づく星空の表象で

夢の終わりの表象だった


もろき想いに悲しみ刻み

沈黙を守る隠者の微笑み

目を閉じ散りゆく乙女たちの

涙を別れと笑いつつ

こらえ抑えはばかって

幾程冬を数えたか

もっとも多き年月は

のぼる魂の表顕ひょうけん

まばゆい星空の表顕で

乙女の記憶の表顕だった

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