自由詩:被虐のプランターゴ

弱くも散るを恐れぬ乙女

傷絶えずおのが蜜を

全身にまと

めぐる蜜が枯れようと

鋭き瞳は虫精ちゅうせい映し

また傷を幾多いくたも身に負う

されど傷に倒れることなし

羽の一片

四肢ししの一本

髪のひと筋さえ失うことなし

しなやかなるその肉体の

力はなくもかたさには

強者つわものその味を知る者なし

かの羽散はちらしのオルセトルムさえ

痛み知らずの勇姿ゆうしに逃げて

プランターゴは花精かせいにあらず

は柔らかき石と

ことつむぎ決して襲わぬ

しかれどのぞみ虫にいどんで

戦場いくさば生傷なまきずは絶えぬ

行く先々で蜜を散らし痛みにえて

いくさの土に足跡残す


乙女は痛みを愛と知り

笑顔絶えず己が身に

傷を纏い

向かう虫が絶えようと

鋭き瞳は千里せんり見通みとお

また鋭き愛を幾多も

されどそれより相手にする者なし

切り傷のひとつ

打撲のひとつ

骨折のひとつさえ負うことなし

古傷だらけのその肉体の

遠のく痛みとあわき愛には

乙女の星も光を失い

更なる愛を痛みを求めて

死者のごとき風貌ふうぼう彷徨さまよ

プランターゴは生けるしかばね

彼には関わってはいけないと

花も虫も言の葉紡ぎ近寄らぬ

しかれど望み花に頼んで

森の安らぎにも生傷は絶えぬ

眉をひそめる花精の目に耐えて

すべての星に足跡残す

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