花精の森の記録(断片)

狐藤夏雪

自由詩:紅唇のポエティカス

森に水引みずひ彼方かなたの泉

詩詠うたうたいの乙女はそのあか

小さな唇で運命さだめつむ

星空のこぼす無数の涙を

大地が飲む幾多の涙を

白金の髪と無色むしきの言の葉で

風にのせて送り出す

天や地に遠く響かせて

それは軽く重き祈り


草木に宿る乙女の話

枯葉の林床りんしょうに足あと残し

木々の隙間に声交わし

木漏れ日に寝息をたてる

永遠とわに老いぬ花の乙女も

刹那せつなに咲いては枯れ失せて

魂は土よりそらへと昇る

四季巡り死して星となる

それは脆く硬き物語


天にまたたくあまたの星

色はある乙女の姿で

光はある乙女の想い

燃えては尽きる地上の記憶

青き光はまばゆく悲しく

紅き光は鈍く優しい

尽きた白灰しろはいの魂は

流れ落ち乙女は咲き誇る

それは醜く美しき輪廻りんね


泉に波打つ詩詠い

狂気は水に溶け込んで

日の本の水面みなもに我を見て

美麗びれいの酔いに身をまか

すべてはこの手に掴めぬと

水を両手ですくっては

口づけしようと浴びせかけ

その冷たさに微笑ほほえんだ

それは儚く不変のひととき

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