第4話 またまた来ました

「お疲れ様です。あなたは死にました。今のあなたは魂です。この場所の説明は必要ですか?」


「3度目なので、いらないよ」


 戦闘訓練所で能力の練習をしまくった。


 空を飛んだり、すごい速さで動いたり、ビームを出してみたりと滅茶苦茶面白かった。


 そして、やはり制限時間が足りないことに気が付いた。

 なので、すぐに生まれることにした。


 制限時間をためた方が良いと思うし、もうちょっと身体の数値が高い方が、消費を抑えられて良いからだ。


 そして、また、ここに来てしまった。


 あの口の悪い受付嬢の天使もいる。


「かしこまりました。それでは採点を致します」


 生前の行動が採点されるって、なんか嫌な気分だ。

 ずっと誰かに見張られているみたいだ。


「終了しました。こちらが評価となります」


 地球出身、名前なしのししゃも。


 死因は生まれて、すぐに他の魚に食べられて死んだと。


 前と同じだな。

 自分のことながら情けなくて笑えてくる。


 世界を維持するために、その命を捧げるという善行をしたため、評価が大幅に上昇する。


 ここも前と同じだな。


「では、まずは、あなたがどのように生まれるのかを決めます。来世設定ガチャで」


 また魚にでもなるのか?

 それとも虫か?



 星   ……地球。

 種族  ……人間。

 性別  ……雄。

 頭脳  ……1。

 身体  ……1。

 外見  ……1。

 親   ……1。

 超能力 ……なし。

 制限時間……60日3秒。



 え!?


 人間!?

 地球の人間だと!?


 しかも、能力の数値が最低の男だと!?


 うーん。

 人間になれるのはうれしいけど、この能力値だと生きるのに苦労しそうだな。


「これは喜ぶべきか、悲しむべきか?非常に迷う結果だな」


「あぁ、なるほど。クソみたいな能力ですが、種族は最高ですね」


「クソ!?もうちょっと言葉を選べよ!?」


 相変わらず口が悪いな。

 クソって、言うなよ、クソって。


「ところで、自決すると評価が下がったりするのか?」


「下がります。それもかなり。制限時間がマイナスになる可能性もあります」


 生まれて、すぐに自決はマズいか。


 この状態では、苦労するどころか悲惨な目に遭うだろう、ハッキリ言って生まれたくない。


 かと言って、カード探しをするにしても、この制限時間と身体の数値では、戦闘で苦労するだろう。


 最悪、敵にやられてしまって、制限時間を失い、そのまま生まれてしまう可能性もある。


 カード探しを行うことを、ためらってしまうな。


 さて、どうするべきか?


「仕方ないので教えてあげます。あちらに来世設定の取引を行っている場所があります」


「え?そんなものがあるのか!?早く教えてくれよ!」


「面倒なので、教えたくなかったのですが、今回のような場合は仕方ありません。いつまでも悩んでいられると邪魔なので」


「職務怠慢だろ!?」


「合理的な判断による、時間短縮テクニックです」


「ウソつけ!ちょっと責任者を呼べよ!文句を言ってやる!!」


「神は、そんなに暇ではありません」


「おのれっ!もういい、ちょっと、その場所に行ってくる!」


「さっさと決めて生まれてくださいね」


「うるせぇよ!」


 あぁ、なんて腹立たしい天使だ!


 だが有益な情報をもらったから、もう良いか。


 その取引所に行けば、もしかしたら、能力を上げられるのかもしれない。


 最悪、種族を変えてもらえば良いからな。



「ここか」


 取引所に着いた。


 いろいろなカードが並んでいる。

 見た目はカードショップの店内のようだ。


 地球にもありそうな店だな。


「いらっしゃいませ~」


 店員と思われる天使が声をかけてきた。

 占い師みたいな格好をした、怪しい雰囲気の美女天使だ。


「初めて来たのだが、ここはどういうところなんだ?」


「ここはカードの売買ができるのよ。星や種族の交換もできるわよ」


 種族の交換ができるだと!


 それは好都合だ。


 あ、そういえば、俺はお金を持ってないな。

 そもそも、いったい何で取引をするんだ?


「ところで、お金は必要なのか?」


「いいえ、取引に使うのは制限時間よ」


 なるほどな。

 制限時間がお金の代わりか。


 さらに特殊な力を使うのにも制限時間が必要になるわけで、制限時間が重要過ぎじゃないか?


 ということは、制限時間の使い方が、ここの攻略の鍵を握っているわけだな。


「売っているものを見て良いか?」


「どうぞ。この建物の中なら、制限時間は経過しないからね。ゆっくり選んで良いわよ。多分」


「多分って?どういうことだ?」


「あまり時間をかけ過ぎると、生まれる予定の星が壊滅する可能性もあるわ」


「そ、そんなこともあるのか……」


「めったにないけど、起こることもあるわよ」


 まあ、地球なら大丈夫だろ。

 多分。


 大丈夫だよね?

 頼むよ、今を生きている地球人たち。



 それでは気を取り直して、商品を見てみよう。


 いずれかの能力の数値を1上げるカード、お値段、なんと制限時間1000年!?


 高過ぎっ!?


 なんだよ、これは!?

 ぼったくりじゃないか!?


 ししゃもになって食われた時なんて、30日しか増えてないんだぞ!?


 後、何回、食われれば買えるんだよ!?


 1年を365日で、うるう年を除外して計算すると、12167回か!?


 そんなにやってられるか!?

 気が狂うわ!!


 他はないのか、他のカードは!!



 ん?

 これは?

 チート能力セットだとっ!?


 鑑定、アイテムボックス、魔法の3つがセットになって、お値段、制限時間5000京年!?


 京って、確か1兆の1万倍の単位だろ!?


 高過ぎるっ!?

 買わせる気ないだろ!?


 なんだよ、これは神とか天使とかの嫌がらせだろ!?


 おのれ!

 神と天使どもめ!!


 腹立たしい!!



 次のを見てみようか。


 ここは星のカードのコーナーか。


 地球のお値段は、制限時間1000年!?

 結構高く感じるけど、他はどうだろう?


 とても暮らしやすい星。

 メチャクラヤス星、お値段、制限時間1000万年!?


 高過ぎるっ!?

 地球の1万倍!?

 そんなに暮らしやすいのか!?


 ある意味オススメ商品。

 ヨノオワリダ星、お値段、制限時間1日!?


 安っ!?

 なんだこれは!?


 ある意味オススメって、どういうことだ!?

 まさか、今の俺のためのものなのか?


 剣と魔法のファンタジーワールド。

 ヴァルイジガルド星、お値段、制限時間50万年。

 ヘルガーヴァドル星、お値段、制限時間5万年。


 こんな星もあるのか!?


 行ってみたいけど、お値段が高いな。

 残念だけど、今はどうにもならないな。


 ところで、お値段10倍も違うのは何かあるのだろうか?

 イージーモードとハードモードの違いだったりするのか?


 地球とほとんど同じ。

 ヂタマ星、お値段、制限時間1000年。


 ピンからキリまで、いろいろあるな。


 訳あり商品。

 コーンカツ星、お値段、制限時間900年。

 リンフリン星、お値段、制限時間800年。


 何かちょっと怪しいものまである。


 星の訳あり商品って、いったいなんなのだろうか?

 食品なら形が悪かったり、割れてたりするだけで、意外とお得なんだけどな。


 意味不明過ぎて、ちょっと買う気にはならないな。



 次は種族のカードのコーナーを見てみよう。


 人間のお値段は、制限時間1000年だと!?


 すごい高額だ!!


 ししゃもは無料!?


 なんだこれは!?

 この値段の差はひどいだろ!?


 みんながんばって生きているんだぞ!!

 失礼だろうが!!


「その値段は、需要と供給で決まっているのよ。生物たちをバカにしているわけではないわ」


 取引所の天使にツッコまれた。


 俺の心を読んだのか!?

 というくらい適切なツッコミだな。

 天使だし、そのくらいできても不思議ではないか。


 まあ、生物たちをバカにしていないなら、それで良いか。



 次は性別のカードのコーナーだ。


 男女の交換は、制限時間を1日払うとできるようだ。


 ここは安いんだな。


 ん?

 これは!?


 両性具有、お値段、制限時間1年!?


 いつでも好きな時に性別の切り替えができる特殊体質、お値段、制限時間1万年!?


 え?

 こんなことまで、できるのか!?


 さすがは神や天使だな。


 まあ、別に必要ないけど。



 超能力のカードのコーナーも見てみるか。


 うわあ。


 どれも高いな。


 10兆年とか100兆年とかが並んでいる。


 超能力なんだし、こんなもんなのかな?



 おや?

 ここは?


 これは武器に防具のコーナーか。


 こんなものまで売っているのか。


 刀身約90センチの両刃の鉄の剣、お値段、制限時間10日か。


 なかなか安くて、お買い得だな。


 いざ敵と戦う時に素手では不安だから、買った方が良いかもしれない。


 銃もあるのか。


 こちらは高いな。

 1000年単位のお値段だ。


 これらは、しばらく手が出せないな。



 店を一通り見て回った。


 さて、どうしようか。


 地球とヨノオワリダ星、人間とししゃもを交換すれば良いか。


 あれ?

 これは可能なのか?


 ヨノオワリダ星に地球の生物のししゃもなんて、存在しているわけないよな?


 ちょっと質問してみようか。


「その場合は、ヨノオワリダ星にいるししゃもと同額の生物と交換されるわ」


 なるほどね。


「どの生物と交換になるんだ?」


「そうね。クワルレシムという名前の虫なんて良いんじゃない?あなたの目的にも合うだろうし」


「クワルレシム?どんな虫なんだ?」


「地球のイモムシみたいな外見の生物で、ヨノオワリダ星の食料みたいな生物よ」


 言い方にトゲがあり過ぎるだろ!?


 食料って!?


 まあ、天敵がたくさんいるってことだろう。


 ちょうど良いか。


「では、種族はそれを、星をヨノオワリダ星と交換してくれ」


「毎度~」


 よし!

 これで俺の制限時間が一気に増えたぞ!!


 2000年と59日と3秒だな。


 さて、生まれるとするか。


「神様、もう生まれることにします」

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