第10話 ギョギョイ生
ここは?
海の中なのか?
いや、川とか湖なのかもしれないな。
まあ、とにかく水の中だ。
それも水底だ。
岩が周囲にたくさんある。
俺は、なぜこんなところにいるんだ?
ああ、そうか、思い出した。
おそらく制限時間を使い果たしたんだろう。
肉体が激しく損傷すると制限時間を使って、自動的に回復しようとするって、説明書に書いてあったな。
その途中で制限時間がなくなって、生まれたのか。
確かギョギョイとかいう生物に。
周囲に魚のような生物がたくさんいる。
メダカの稚魚のような外見だ。
そして、すべて同じような見た目をしている。
これがギョギョイか。
そして、彼らは俺の兄弟なのだろう。
初めまして、よろしくな、兄弟たち。
む!?
何か来る!?
俺は素早く岩陰に避難した。
え!?
兄弟たちが逃げようとしていないだと!?
まさか気付いていないのか!?
おい、兄弟たち、何か来るぞ、逃げろっ!!
早くしろっ!!
間に合わなくなっても知らんぞ!!
大型の魚が、ものすごい速さでやって来た。
そして、大きな口を開けて兄弟たちを飲み込んでいった。
あれが俺たちの天敵なのか。
怖過ぎる。
ん?
ちょっと待てよ?
あの魚に飲み込んでもらえば、また転生町に行くことができたのか?
惜しいことをしたかな?
いや、あの口の悪い天使が、自決をすると評価が下がるとか言ってたからな。
わざと死ぬような事はしないようにしよう。
さて、せっかくギョギョイになったんだし、ちょっと泳いでみようか。
ししゃもの時は、すぐに食べられて、あまり泳げなかったしな。
それに、何もすることなくて暇だし。
おお!
とんでもない速さで泳げる!!
身体能力の数値が高いからなのか?
それともギョギョイだからなのか?
まあ、どうでもいいことか。
とにかく、ししゃもの時より、ずっと速い気がする。
しかも俺は他の兄弟たちよりも、ずっと速く泳げるようだ。
さすがは身体の数値が7の体だな。
運動神経は抜群だ。
むむ!?
また大型の魚が来た!?
気付いてしまった以上は、避けなくてはならない!
評価を下げられてたまるかよっ!!
俺は、また岩陰に隠れた。
兄弟たちの何匹かは、また食われてしまった。
どんどん数が減っていく。
なんて過酷な世界なんだっ!?
このギョギョイという生物を取り巻く環境は!?
いや、生物というものは、すべてこんなものなのかもしれない。
人間だって、簡単に死なないだけで相当厳しいしな。
生物は辛いぜ。
それにしても、今の俺って、洞察力とか直感力が優れているような気がする。
これが頭脳の数値10の効果なのか?
頭脳の数値は想像以上に重要な数値なのかもしれない。
生まれてから、どのくらいの月日が流れたのだろうか?
俺は食われずに生き残っていた。
頭脳と身体の数値の高さのおかげなのだろう。
生存能力が、とても高いようだ。
食べ物を探すのも得意だしな。
おかげで俺の体は、かなり成長した。
おそらく、もう成魚になっているのだろう。
そして、本能で、なんとなく分かるのだ。
そろそろ産卵の時期であるということが。
まあ、俺は雄だから、卵にぶっかける方だけどな。
確か放精とかいう名称だったかな?
さて、ここまで生き残ったのだから、ぶっかけに行くとするか。
盛大にやってやるぜ!!
おっ!
あれはギョギョイの雌だな。
目が輝いていて、肌にツヤがある。
さらにウロコがキレイに揃っていて、脂が乗っている感じがする。
今の俺には、なんとなく感覚で分かる、彼女は良い雌だ。
人間にしたら、ものすごい美女なのだろうと思う。
しかも腹が大きくなっている。
もうすぐ産卵をするのだろう。
よし、あの美ギョギョイのお姉さんをナンパしに行こう!!
そこのお姉さん、これから産卵するんでしょ?
ぶっかけて良いですか?
という感じで、まとわり付いてみる。
人間だったら通報ものだな。
すぐに警察が飛んで来そうだ。
でも、ギョギョイには警察なんていないから問題ない。
それどころか、美ギョギョイのお姉さんの方から追い払われたりしない。
俺は気に入ってもらえたのかな?
そういえば、外見の数値も高かったな。
そのせいなのか?
ギョギョイの世界でもイケメンが有利なのか?
クソッたれめ!!
来世でも外見の数値を上げて生まれることにしよう。
あ、他の雄のギョギョイが寄って来た。
彼女は俺のものだ!!
という感じで、体当たりをして追い払う。
やはり彼女は良い雌のようで、他の雄が結構な頻度でやって来る。
その度に俺が体当たりで追い払っている。
相当な重労働だ。
モテる彼女がいると苦労するんだなぁ。
そろそろ産卵をするようだ。
美ギョギョイのお姉さんが岩陰に産卵し始めた。
俺は、すかさずぶっかけた。
力の限り出しまくった。
もう出なくなった時、俺の全身から力が抜けきっていた。
体に力がまったく入らない。
意識もハッキリしなくなってきている。
なぜか今までの記憶がよみがえる。
食われそうになったり、兄弟が食われたり、食われそうになったりしながら懸命に生きていたな。
これは、もしかして、走馬灯なのか?
あぁ、そうか、これが寿命なのか。
俺は最後まで生きれたんだな。
これで、もう満足……
いや、まだだ!
まだ俺は全然満足しちゃいないっ!!
超能力を使わずに満足してたまるかっ!!
俺は、また、あの場所へ、転生町へ行くんだ!
俺は決意を固めた。
そして、俺は意識は徐々に薄れていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます