第11話 前世の良縁

「お疲れ様です。あなたは死にました。今のあなたは魂です。この場所の説明は必要ですか?」


「5度目なので、いらないよ」


 良かった。

 また、ここに来ることができた。

 超能力を使える可能性が、まだあるということだ。


 あの口の悪い受付嬢の天使もいる。

 彼女は相変わらずのクールな美女だな。


「かしこまりました。それでは採点を致します」


 さて、どんな評価になるのか?

 今回は寿命まで、がんばって生きたからな。


「終了しました。こちらが評価となります」


 バクスンゼ星出身、名前なしのギョギョイ。


 特筆すべき死因はなし。

 自然死。


 ギョギョイという種族で、子孫を残すまで生き延びたことにより、評価が大幅に上昇する。


 ギョギョイで生き残っただけで、評価が大幅に上昇するのか。


 多産多死の生物で子孫を残すのって、やはり大変なんだな。


「では、まずは、あなたがどのように生まれるのかを決めます。来世設定ガチャで」


 さあ、今度は何になるんだ?



 星   ……アーゼビルド星。

 種族  ……マウ・ネスズ。

 性別  ……雄。

 頭脳  ……5。

 身体  ……9。

 外見  ……1。

 親   ……10。

 超能力 ……前世の良縁。

 制限時間……1年。



 え?


 な、なんだと!?

 超能力があるだと!?


 なんなんだ!?

 この前世の良縁という超能力は!?


「あの、この超能力の前世の良縁とは、いったいなんなんだ!?どんな効果だ!?いつ発動するんだ!?」


「ああ、それは言葉通りの能力ですね。前世で良縁があった方と、来世で、また出会うことができるという能力です」


「良縁ねぇ?そんなのいたかな?」


 人間の感覚からすると、それほど他のギョギョイと関わっていない気がする。

 当然ながら、他の生物とも関わっていない。


「ボッチだったのですか?それなら意味のない能力ですよ。寂しい一生でしたね」


「もっと言葉を選ぶべきだろっ!?後、ボッチじゃないぞ!?兄弟も妻みたいな存在もいたんだぞ!!」


 ギョギョイのだけど。

 ああいった生物に良縁とかあるのだろうか?


「なら、その中の誰かなのでは?おや?次の方が来たようです。邪魔ですよ。さっさと準備して生まれてください」


「はいはい、分かったよ」


 本当に口の悪いヤツだな。


 仕方ないので受付の前を空ける。


 すると、そこに見覚えのある魚が突然現れた。


 あれはギョギョイ!?

 しかも産卵の時に会った、美ギョギョイのお姉さんだ!?


「人間ではない方でしたか。では、来世の設定が決まりましたら、人間化を行います」


 え!?

 人間化!?


 口の悪い天使が美ギョギョイのお姉さんに向けて手をかざした。

 そして、青白い色の光線を放った。


 それを受けた美ギョギョイのお姉さんは人間になった。


「今のは、いったい何をしたんだ!?」


「なんですか?邪魔ですよ。さっさと生まれてください」


「まあ、良いじゃないか。教えてくれよ。なんで人間にしたんだよ」


「ここの施設を、あの姿で使えるわけがないでしょう?なので、仕方なく人間にしているわけです。少し考えれば分かることでしょう?それとも頭が悪いんですか?」


「口が悪過ぎるだろっ!悪かったな、思い付かなくて!わざわざ答えてくれて、ありがとうございます!!」


「用件は済みましたか?こちらの方に説明しなければいけないので、あなたは速やかに生まれてください」


「はいはい、準備が終わったらな!」


 なるほど。

 この場所に人間しかいなかったのは、ああやっていたからなのか。


 まあ、俺には特に関係ないけどな。


 それにしても、あの人間になった美ギョギョイのお姉さんは美女だったな。


 水色のキレイな髪と瞳。

 良家のお嬢様みたいな、おっとりとした雰囲気。


 スタイルは抜群!!

 出るべき場所が、とてつもなく出ている。


 美しさを表す言葉が、すべて当てはまりそうな美女だった。


 是非とも、お近づきになりたいな。

 ちょっと声をかけてみようか?


 あ、でも、そんなことをしても意味ないか。

 どうせ生まれる時には、お別れだしな。


「あの、この超能力の前世の良縁とは、いったいなんなのですか?」


「ああ、それは……」


 口の悪い天使と美ギョギョイのお姉さんの会話が聞こえてきた。


 え!?

 ちょっと待って!?


 今、超能力の前世の良縁って言わなかった!?


 まさか俺の前世の良縁の相手って、あの美ギョギョイのお姉さんなのか!?


 ちょっと聞いてみよう。


「あの~、ちょっと聞きたいことがあるのだが」


「なんですか?こちらも忙しいので、さっさと生まれて欲しいのですが」


 口の悪い天使に文句を言われた。


「はいはい、悪かったな。前世の良縁の相手が、誰なのか分からないのかと思って、聞きに来たのだが?」


「それなら能力を発動すれば分かるのでは?発動方法は戦闘用の能力と同じだと思いますよ」


「そうなのか?やってみるか」


 それでは発動だ。


 対象者と居場所が分かった。

 やはり俺の相手は美ギョギョイのお姉さんだったようだ。


「どうやら君が能力の対象者だったようだ」


「そうなのですか?私も使ってみますね」


「ああ、そうしてくれ」


「確かに、そのようですね。ふつつか者ですが、末永くよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 ん?

 今の挨拶って、結婚する者同士がするものじゃなかった?


 まあ、良いか。

 それよりも自己紹介をしないと。


「俺の名前はセイヤ。君は?」


「私の名前ですか?ありません。誰も付けてくれなかったので」


 前世はギョギョイだったし当然か。


「なら俺が名付けようか?名前なしは人間にとっては不便だからな」


「そうなのですか?ならお願いします」


 と自分で言っておいてなんだが、名前か何が良いかな?


 前世は魚っぽかったから……


「カナというのはどうだ?」


「カナですか?覚えやすくていいですね。では、今から私に名前はカナです。改めまして、よろしくお願いします」


「ああ、こちらこそ、改めてよろしく!」


「サカナのような生物だったから、カナですか。単純ですね」


 口の悪い天使にツッコまれた。


「うるせぇな!純朴な感じの良い名前だろ!!」


「はいはい、もういい加減、邪魔ですから、早く生まれてください。いつまでも受付の前にいられると迷惑ですよ」


「悪かったな!!さあ、カナ、もう行こう!」


「はい!」


 カナのおかげで来世が楽しみになってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る