第9話 天使の日々

 私は天使のメジマエル。


 仕事は転生町での雑務。

 本当に細々としたものを、いろいろとやっている。


 私は、他の天使から真面目な性格だけど、不器用だと言われている。


 この間は、取引所で売るための剣を作って、と頼まれて作った。


 完成品を見た、取引所担当の天使アヤイエルに、


「あなた、不器用過ぎるわね。私は剣を依頼したのよ。なんなの?このバールのようなものは?」


 と言われてしまった。


 失礼なヤツだ。

 私が一生懸命に作った剣なのに。


 どう見てもバールだったが、剣なのだ。

 見た目はどうであろうと、心は剣なのだ。


 アヤイエルには、それが分からないのか?


 敵を倒せるなら、剣でもバールでも、どっちでも良いじゃないか。


 私が、あまりにもバールのようなものを量産するので、他の仕事をすることになった。



 次の仕事は、魂の前世を評価をする仕事だ。


 この仕事は、神の作った『ハイパーゴッドスペシャル前世評価マシン』という道具を使って、魂の前世を調べて評価し、受付に渡すというものだ。


 ところで、このネーミングセンスの悪さは、なんとかならないのだろうか?


 普通に前世評価マシンで良いと思うのだが。


 まあ、どうでもいいか。


 仕事をしよう。



 この魂は、善行、悪行ともに目立ったものはないようだ。


 死因は、夜更かしのせいで寝不足で、転んで頭を激しく打ち付けた!?


 マヌケ過ぎる、評価マイナスだな。


 評価をまとめて、受付のケマーナエルに渡す。


 さて、次だ。


 おや?


 ケマーナエルの受付でもめ事が起こっている。


 ついさっき渡した評価の対象者だ。


 制限時間が3秒だったのが不服のようだ。


 あんな自業自得でマヌケな最期だったのに、よく文句が言えたものだな。


 どれ、この私が対処してやろうかな。


 と思ったが、どうやら私の出番はないようだ。


 すでにケマーナエルが言いくるめていたのだ。


 そして、文句を言っていた魂は、次の生に向かって旅立って行った。


 ケマーナエルは優秀だな。


 仕事を効率良くこなしていて、とてもすごい。


 私もがんばらないと。


 でも、他の天使には、口が悪いだの、怠け者だの言われている。


 どうしてなのだろうか?



 今日はカジノの仕事を手伝うことになった。


 前世の評価の仕事をクビになったわけではない。


 本来担当する予定だった天使が二日酔いで、仕事を休んだからだ。


 二日酔いはつらいから仕方ないか。


 私も経験があるから分かる。


 神でも二日酔いはつらそうだったし。



 ん?


 そろそろ仕事の時間だ。


 急いで準備をして、カジノに向かわないと。



 仕事内容はランダムカードガチャのサクラだ。


 ランダムカードガチャは、すべてのカードの中から無作為に選ばれたカードが1枚出てくると、魂たちに説明されているが、実は違う。


 超能力などの超高額なカードは出てこないのだ。


 しかし、そんなことをしていれば、そのうちにバレるだろう。

 魂たちも、そこまでバカではないからな。


 なので、定期的に天使が魂のフリをして、ランダムカードガチャを引いて、超能力などの超高額カードを手に入れたという演技をしているのだ。


 ちょっとひどい気もするが、これも世界の維持のためなのだ。


 魂たちには、神の試練だと思って耐えてもらおう。


 許せよ、魂たち。


 制限時間を減らして、早くと生まれてもらわないと、生物が絶滅してしまうからな。


 これは仕方ないことなのだ。

 お酒を、ついつい飲み過ぎて二日酔いになるようなものなのだ。



 よし、魂に変身できた。


 天使には変身能力があり、その姿を自在に変えられるのだ。


 今の私は、どこからどう見ても、その辺にたくさんいる普通の魂だ。

 これでサクラの仕事を問題なくこなせる。


 では、出発しよう。



 カジノに着いた。


 魂たちがギャンブルを楽しんでいる。

 相変わらず、やかましい場所だな。


 おや?

 魂がうなだれている。


 どこかで見たような横顔だな。

 原因は想像が付くけど、ちょっと気になったので調べてみた。


 天使は心を読むことができるのだ。

 普段は面倒だし、うるさいから読んでないけど。


 ほう、なるほどな。

 なんでもギャンブルに負けて、制限時間1600年分、損したらしい。


 想像通りの結果だったな。

 こいつは、そこら中にいるアホの1人であったというわけだ。


 まあ、どうでもいいか。

 仕事をしよう。



 ランダムカードガチャの前に来た。


 魂たちがたくさんいる。


 ここは相変わらず大人気だな。


「クソッ!またマイワシに、ししゃもか!!」


「俺は、またアブラムシだ!こいつは無料のカードしか当たらねぇのか!?」


「あなたたちもなの!?私も無料のカードばかり出てくるのよ!!」


「私もよ!さっきから無料のカードばかりよ!やっぱりインチキなんじゃないの!?」


 魂たちがランダムカードガチャを疑い始めている。


 早く仕事をしなければ!


 私の仕事に生物の未来がかかっているのだ!!


 私は、1回、制限時間1000年のランダムカードガチャの前に立つ。


 ちなみに、他には、1回、制限時間10日、100日、1年、10年、100年のランダムカードガチャがある。


 高額なほど良いカードが当たりやすい。


「おい、あいつ1000年のヤツをやる気だぞ!!」


「正気か!?1000年だぞ!」


 周囲がざわつき始める。


 ちなみに、今の台詞を言ったのも天使である。

 こうやって、注目させるのだ。


 私は開始ボタンを押す。


 派手な演出とともにランダムカードガチャが動き出す。


 そして、派手な大当たり演出とともに、カードが出てくる。


 私はカードを受け取り、天高く掲げる。


「あれは超能力『火炎』のカードだ!取引所で見たことあるぞ!!」


「俺も見たことあるぞ!確か、制限時間10兆年で売られていたはずだ!!あんなのが当たるのかよ!!」


「すげぇよ!!やっぱり当たる時があるんだな!!」


 この台詞を言っているのも天使である。


 ちなみに、この超能力は自由自在に火が出せて、操れるというものだ。


 私は手のひらから炎を出してみる。

 もちろん魂たちに見えやすいように、やや派手に出す。


 周囲から喝采を浴びる。


 そして、魂たちは、我先にとランダムカードガチャに群がっていく。


 大成功だ!!


 これで今回の私の仕事は終了だ。



「みんな~、今日は飲み行きましょう!!」


 この声は神のものだ。


 宴会のお誘いか。


 神も天使もお酒好きで、よく飲みに行く。


 私もお酒は嫌いじゃない。


 週に9回、飲みに行ったことがあるくらいだ。


 ちなみに、天使は完全週休2日制なので平日1回、休日2回、飲みに行くと、この回数になる。


 さて、この宴会にも参加するか。


 せっかくの神からのお誘いだしな。

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