第105話 世界情勢

 忙しい……


 あまりにも忙しい……


 現在は車に乗って、次の笑死族の拠点に向かっている最中だ。


 俺たちは、いったい、いくつの拠点を潰したんだ?


 今日で何日連続で働いているんだ?


 そもそも、あれは拠点だったのか?


 まともな建物のない、青空拠点ばかりだったのだが。


 それに笑死族の連中のギャグ、あれはどこに笑える要素があったんだ?


 もうよく分からないし、思い出せもしないぞ。


 今の俺たちは移動と、仕事というか戦いを繰り返す生活を送っている。


 食べるのも、寝るのも、移動しながら済ませている。

 風呂はマネージャーが、体を洗浄する魔法を使ってくれる。


 な、なんなんだ、このブラック労働は?


 延々と笑死族と戦っている気がするぞ……


 と言っても、ヤツらのくだらないギャグを真顔で見ているだけで、次々と倒せるんだけどな。


 ああ、なんてやりがいのない仕事だ。


 いや、これは人類を救ってはいるんだよな?


 どうなんだろうか?


 疲れ過ぎて、何を考えているのか、よく分からなくなってきたぞ。


 ちょっと寝た方が良いようだ。


 おやすみなさい。



「起きてください。現場に着きましたよ」


 マネージャーに起こされた。


 ああ、着いたのか……


 さて、またくだらないギャグを見に行くか……



 はい、終わりました。


 くだらないギャグを無表情で眺めていたら、笑死族が死にました。


 フトンがフットンでないそうですよ。


 無表情で見ていたら、笑死族自身がフットンだんですけどね。


 うん、実にくだらない……



 現在は、次の現場に向かっている最中だ。


 ああ、こんなことを、いつまで続ければ良いのだろうか?


 そういえば、今の世界情勢とか、戦況はどうなっているのだろうか?


 ちょっとマネージャーに聞いてみようか。


「今の世界ですか?その、非常に申し上げにくいのですが、あまり良いとは言えませんね……」


 マネージャーが浮かない表情でそう言った。


「具体的には、どんな感じなんですか?」


「生き残った人々は協力して各地に魔法で障壁を作り、笑死族の侵攻を防ぎながら生活しているようです」


 なるほど、そんな手があったのか。


 敵に囲まれて不安な日々を送っていそうだ。


「俺たち以外に戦える人って、いないんですか?」


「真正面から戦えるのはお二方だけです。他の方は、かなり遠くから攻撃するか、ワナを仕掛けるくらいしかできません」


「直視すると笑ってしまうからですか?」


「その通りです。普段から肉体や精神を鍛えている者は、極短時間なら耐えることができますが、やはりそれだけでは戦闘は難しいですね」


「具体的にどんな戦い方をしているんですか?」


「時限爆弾や地雷を仕掛ける、笑い出すまで狙撃銃を撃つ、といった戦法を取っています」


 そんな方法なのか。


 みんなもがんばっているんだな。


 俺もがんばらないとな。


「次の目的地に着きましたよ。この道を真っ直ぐ進むと、突き当りに空き地があります。そこが拠点だそうです」


「分かりました」


 それじゃあ、行くとするか。


 って、そういえば、カナは?


 ……寝ているな。


 よほど疲れているんだろうな。


 よし、ここは俺一人で行くとするか。


「お一人で大丈夫ですか?危険なのでは?」


「大丈夫ですよ。無理そうなら、すぐに逃げてきますよ」


「そうですか。分かりました。では、くれぐれも、お気を付けください」


 さて、行くか。



 拠点に着いた。


 確かに空き地だな。


 いつもの白い紙袋の不審者たちと、不審なものがあるけどな。


 なんだあれは?


 小さい時計塔なのか?


 全長2メートルくらい、全幅1メートルくらい、上部にアナログの時計が付いている茶色の塔だ。


 最上部は、四角すいのような形になっていて、先端が尖っている。


 あれも笑死族なのか?


 こんなところに時計塔があるなんて不自然だし、そう考えるべきだよな。


 あ、そうだ、念のために実況と解説に聞いてみよう。


 それでは召喚!!


「おおっと、あれは塔父ちゃんのモデルになった、塔父さんですね!!」


「いやあ、お姿を拝見することができて、大変うれしいですねぇ」


 な、なんだって!?


 塔父ちゃんにもモデルがいたのか!?


 しかも塔父さんって、名前がほぼ一緒じゃないか!?


 神と天使は何やってんだよ!?


 もうちょっと工夫しろ!!


 まあ、良いか、さっさと倒してしまおう。


「な、なんと!!塔父さんには戦闘能力がありますよ!!」


「今までのように、笑死力のギャグ特化型ではないんですねぇ」


 え!?


 いつものように無表情で眺めていれば、良いわけではないのか!?


 うーむ、どうするか?


 カナを呼んで来るべきか?


 いや、でも、疲れているみたいだしなぁ。


 ここは誰かを召喚して、戦うことにするか。


 さて、誰を召喚するか?


 ここは塔父ちゃんを召喚するか。


 モデルとなったものと、どちらが強いか勝負だな。


 では、召喚だ。


 塔父ちゃんが現れた。


 すごく久しぶりに見たなぁ。


 よし、行くか!!

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