第104話 マネージャーが仲間になった
笑死族の拠点から戻って来た。
というか、車に乗せられて、知らない場所に連れてこられた。
高級感のある高層ビルだ。
お偉いさんが働いていそうな場所だな。
おや?
看板があるぞ。
笑死族対策本部だそうだ。
ああ、なるほど、それで連れてこられたのか。
ん?
あちこちで偉そうなおっさんたちがもめているようだ。
今後の方針を話し合っているのか?
なんだか難航して、何も決まらなさそうだなぁ。
さて、俺たちはちょっと休憩するか。
そんなことが許されるほど、世の中は甘くはなかった。
「初めまして、勇者のお二方、私はミユマ・ユヨミと申します」
長い黒髪を後ろで縛っている、知的な感じの眼鏡をかけた美女に話しかけられた。
紺色のスーツを着こなして、いかにも仕事ができそうって感じのお姉さんだ。
おっと、挨拶をされたのだから返さないとな。
俺たちも挨拶を返した。
「本日より、私がお二方のマネージャーに任命されました。よろしくお願いいたします」
ええっ!?
マネージャー!?
いったい、どういうことなんだ!?
「お二方が最大限力を発揮するための措置です。スケジュール管理等のサポートはおまかせください」
スケジュール管理!?
なんだそれは!?
芸能人のマネージャーみたいなものなのか!?
「それでは、次の笑死族の拠点へ向かいましょう」
マネージャーに促され、俺たちは車に乗せられた。
本日3か所目だぞ!?
なんてひどいんだ!?
と思ったが、この状況では仕方ないのか?
1時間ほど車を走らせ、目的地に着いた。
そこは高さ2メートルくらいの青色の滑り台があるだけの、小さ目の公園だった。
遊具が全然ないな。
ブランコも砂場もベンチすらもないぞ。
ただ白い紙袋の不審者たちはいるけどな。
ここが笑死族の拠点で間違いないようだ。
さて、倒そうか。
俺たちは公園に入った。
「ナニヤツ!?」
どこかから聞き覚えのない声が聞こえてきたぞ。
笑死族か?
「ほう、人間の方から、やって来るとは思わなかったぞ。良い度胸だな、褒めてやろう!」
滑り台の方から、声が聞こえてくる。
誰かが隠れているのか?
それとも……
「その勇気に敬意を表し、この笑死族遊撃六百三十四天王の一人、スベラナイ・滑り台が相手をしてやろう!」
どうやら滑り台自体が、しゃべっていたようだ。
それにしても、六百三十四天王って、数が多いなぁ。
滑るのか、滑らないのか、分からないし。
遊撃というより、遊具だし。
「な、何ぃ!?人間のくせに笑わなかっただと!?ま、まさか、勇者だとでも言うのか!?」
やっぱり笑わないと勇者扱いなんだな。
ところで、どこで笑わせようとしたんだろうか?
よく分からないなぁ。
「ならば、この私の本気を見せてやろう!!」
本気だと!?
いったい何をするつもりなんだ!?
「この私、スベラナイ・滑り台のすべらない話を聞かせてやろう!!」
すべらない話か。
ハッキリと宣言するとは、よほど自信があるようだな。
そんなに面白い話なのか?
ここは聞かずに倒した方が安全かもしれないな。
さて、何で倒すか?
やはり爆発するまかいで、吹き飛ばすのが確実か?
「な、なんだと!?グアアアーーー!!!」
な、なんだ!?
なぜか突然、スベラナイ・滑り台が苦しみだしたぞ!?
いったい、どういうことなんだ!?
「バ、バカな!?滑り台がすべらない話なんて、できるわけがないと思わないのか!?存在自体が滑るためのものだろと思わないのか!?」
いきなり何を言っているんだ、こいつは!?
あ、もしかして、さっきのが笑死力のギャグだったのか!?
全然、面白くなかったぞ!!
「こ、これが勇者の実力なのか……」
スベラナイ・滑り台が、音を立てて崩れ去った。
ええっ!?
ウソだろ、おい!?
死んだのか!?
俺たち勝ったのか!?
勇者の実力って、いったいなんのだよ!?
笑いへの耐性は実力なのか!?
ああ、もう、どうでもいいか。
さっさと他の連中も倒してしまおう。
というわけで、ササッと倒して、車に戻った。
「お疲れ様です。それでは、次の拠点に向かいましょう」
マネージャーが、とんでもなくひどいことを言ってきたぞ!?
本日4件目だぞ!?
ハードスケジュール過ぎなんじゃないのか!?
「お疲れですか?それでしたら、車の中で寝ても良いですよ。現場に着いたら起こしますので。軽食も用意してありますので、よろしければどうぞ」
なんだこれは!?
忙し過ぎじゃないのか!?
急に人気のアイドルになったような感じだぞ!?
その後も、あちこちに連れまわされて、笑死族と戦わされた。
人類がピンチなのは分かっているけど、スケジュール詰め込み過ぎぃ!?
明らかにやり過ぎだろっ!?
おのれ、笑い過ぎ人間と笑死族め!!
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