第6話 外の世界

 お外が、とても怖いです。

 敵がうじゃうじゃいるらしいので、とてつもなく怖いです。


 カード探しに行こうと思ってから、5か月がたってしまった。


 その間は、ずっと訓練をしていた。


 そのおかげで制限時間を消費する特殊能力は、それなりに扱えるようになった。


 さらに取引所で鉄の剣を買ってきて、剣技の練習もした。


 偶然、出会ったおじいさんが剣の達人で、技を模倣をしたり、アドバイスをしてもらいながら訓練に励んだ。


 そして、そろそろ探しに行こうかなと思っているわけだが、やはり怖い。



 あ、そうだ、防具も買ってこようか。


 お値段、制限時間100日の丈夫な服一式を買ってきた。


 これで少しだけ不安が和らいだ。



 さて、他に何かできることはないかな?


 あの口の悪い受付嬢の天使に、外の情報を聞いてくるか。


「まだいたんですか?さっさと生まれて欲しいのですが」


 相変わらず、口の悪い天使だ。


「外の情報がないかと思って来たのだが……」


「入り口の近くに周辺案内があります。勝手に見てください」


「分かった。ありがとう」



 周辺案内の前まで来た。


 さっそく見てみるか。


 現在地は転生町という町の中央にある、転生役場にいるのか。


 そのまんまなネーミングだな。

 この部分は誰もこだわらなかったのか?

 まあ、分かりやすいから良いけど。


 そして、なぜか転生役場の周辺には、酒場がたくさんある。


 食事処も数軒ある。


 なんでこんなにあるんだ?


 魂だからなのか、俺の腹はまったく減らないのに。


 とすると、天使たちが利用しているのか?


 あいつらって、酒を飲むのか?


 まあ、どうでもいいか。



 さらに、その周辺には娯楽施設と宿泊施設がある。

 カジノ、ゲームセンター、プール、カラオケ、遊園地、図書館、ホテル、温泉旅館といろいろあるようだ。


 ものすごく充実しているな。


 ここって、リゾート地なのか?

 というくらいの充実っぷりだ。


 もしかして、ここって天国なのかもしれないな。


 ん?

 でも、おかしいな。


 神や天使は魂たちに早く生まれて欲しいのでは?


 あの口の悪い天使は、何かと早く生まれろと言ってくるのに。


 こんな遊ぶ場所だらけでは、生まれずに、ここにとどまり続けようとする魂たちが出るのでは?


 行ってみれば分かるのか?



 そして、町の外には、山、森、草原、塔、廃都、城がある。

 さらに、魔界、迷宮、地獄、墓場なんてのもある。


 多分、この場所の、どこかにカードがあるのだろう。


 そう思わせておいて、実は町の中にある可能性もないとは言えないけど。


 得られる情報は、このくらいだな。


 よし!もうやれることはないはずだ。


 出発しよう!!


 怖いけど。

 とても怖いけど。



 転生役場の正面出入口の扉の前にやって来た。


 飾り気のないシンプルな両開きの扉だ。


 これが外に通じる扉か。

 案外普通だな。


 だが、この向こうは外だ、敵がうじゃうじゃいる外の世界なのだ!!


 そう考えると恐ろしい。

 地獄へ続く扉のようにも見える気がする。


 だが行かなくてはならない、俺の夢と希望の超能力者生活のために!!


 さあ、行くぞ!

 オープン・ザ・ドアー!!


 俺は意を決して、扉を開けた。



 これが外か!


 目の前には新たな世界が広がっている!!


 まず目に付くのは、酒場、酒場、酒場、酒場、そして、酒場だ!!


 酒場がたくさんある!

 というか、あり過ぎる!!


 そして、酒臭い!!


 なんだろう?


 このガッカリとした感じは……


 せっかく勇気を出して、外に出たのに、出鼻をくじかれたと言ったところだ。


 まあ、良いか。

 気にせずに出発しよう。


 そういえば、今の俺って嗅覚はあるんだな。


 魂なのに不思議だなぁ。



 転生役場の周囲を見て回っている。


 本当に酒場だらけだ。

 後は、たまに食事処があるだけだ。


 なんで、こんなに酒場を建てる必要があるんだ?


 酒場や食事処には、俺以外の魂と思われる方々がいて食事をしている。


 腹は減らないが食事はできるんだな。


 意味があるのかは分からないが。

 ストレスの解消にでもなるのか?


 そういえば、疲れはするって、説明書に書いてあったな。

 それがゲームのように回復するのかもしれない。


 ん?

 これは?


 食事処の入口に商品と値段が書かれた看板が置いてある。


 日替わり地球定食、お値段なんと、制限時間1時間。


 と書いてある。


 食事を取るにも制限時間を払う必要があるのか。


 あれ?


 そういえば、この定食を頼むと、何が出てくるんだ?


 定食の内容がどこにも書かれていない。

 写真や食品サンプルもない。


 不親切な店だな。


 まあ、注文するわけではないから問題ないけど。


 他にも、いろいろな星の料理がある。


 未知の料理か。


 ちょっと興味が湧いてきたかも。


 制限時間に余裕があったら注文してみようかな。



 あ、あそこの店で、また天使が酒を飲んでいる。


 天使も酒を飲むんだな。

 たまに酒場で飲んでいるところを見かける。


 まあ、どうでもいいけど。


 そういえば魂たちは、みんな人型をしているな。

 たまに獣の耳や尻尾がある獣人みたいなのはいるけど、みんな人型だ。


 ししゃもみたいな完全な魚類はいない。


 なぜなんだろうな?


 親ガチャなんて考えるのは人間だけだってことか?


 だいたい見終わった。


 さて、今度は娯楽施設のある方に行ってみるか。

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