第7話 ギャンブルと草原

 娯楽施設が、なぜ存在するのか分かった。


 どの施設を利用するのにも、制限時間を払う必要があるのだ。


 しかも、何かと制限時間を払わせる仕組みが満載だった。


 入場料が高かったり、飲食物が割高で売っていたり、射幸心をあおるような仕掛けがあったりと、セコいワナがたくさんあったのだ。


 こうやって、遊ばせて制限時間を消費させる気でいるんだな。


 くっ、なんて悪知恵の働く連中なんだ!!


 さすがは神や天使が考えたシステムだ。


 まんまと引っかかってしまった。


 誰がだって?


 もちろん、俺がだ。



 少し前の話だ、俺は興味本位でカジノへ行ってみた。


 そこには今までに見たこともないような豪華絢爛な世界があったのだ。


 なぜかカジノ内部に競馬、競輪、競艇場があった。


 未知の生物同士を戦わせて、その結果を予想する場所があった。


 スロットマシンが大量に並んでいた。


 バニーガールがいた。


 宝くじが売っていた。


 さまざまなカードゲームがあった。


 嫌がらせのようにランダムカードガチャなんてものが置いてあったりもした。

 ちなみに、ランダムカードガチャとは、制限時間を払うと、全カードの中から無作為に選ばれた1枚のカードが出てくるというものだ。


 他にも、さまざまな星のギャンブルがあった。


 1点を除いて、とても楽しめる素晴らしい施設であった。


 その1点はランダムカードガチャ、お前だ、お前はダメだ。

 お前は許さん。

 ランダムカードガチャも親ガチャも滅ぶべし!!



 その中でも、特に素晴らしかったのは、やはり美女のバニーガールたちだ!!


 神や天使のすごさを思い知った。



 せっかく来たことだし、面白そうだったので、記念にスロットに挑戦してみた。


 1回、制限時間1日と安かったからということもあり、ついやってしまったのだ。


 なんと、それが当たってしまったのだ!!


 そして、制限時間100年が手に入ってしまったのだ!


 ここでやめておけば良かったのに、調子に乗って、他のギャンブルにも手を出してしまったのだ。


 そこからは、まったく勝てなくなって、負けた分を取り返そうとムキになってやってしまった。


 そして、気が付けば制限時間1600年分損していたのだ。


 残り制限時間は500年くらいになってしまった。


 今、思い返してみると典型的なギャンブルで破滅する人間のようだ。


 何をやっているんだ、俺!!


 さあ、ここからは真面目に生きていこう!


 いや、もう死んでるんだっけ?


 まあ、良いか。

 とにかく、ここからは真面目に働こう!


 もうギャンブルはしません。

 カジノには近寄りません。

 バニーガールたちを、もうちょっと見たい気もするけど、絶対にカジノには近寄りません。


 俺の心に誓おう!


 絶対に守ろう!!


 よし!

 それでは町の外に行ってみるか。



 町の出入り口まで来た。


 無駄にデカくて、美しい彫刻が施された立派な門がある。


 製作者のこだわりを感じる作品だ。

 まるでゲームに出てくる城塞都市みたいだ。


 ところで、こんなものを作る意味が何かあるのだろうか?


 まあ、良いか。

 素晴らしい芸術作品を見ることができたしな。



 さて、これからどこに行こうか?


 山、森、草原、洞窟、塔、城、魔界、迷宮、地獄、墓場があるんだよな。


 とりあえず、草原に行ってみるか。


 なんとなく草原というと、初心者用っぽい印象を受けるからな。


 もちろん、その思い込みを利用したワナかもしれないけど。




 草原に着いた。


 道中に案内板があったので、迷わず来ることができた。

 用意してくれた神か天使は、なかなか気が利く優秀な方のようだな。


 それにしても、ここは見事なまでの草原だなって、感じの場所だな。


 短めの草に覆われている広い大地。

 所々に木が生えている。


 実に典型的な草原だ。


 景色も良いし、天気も良いし、お弁当を持っていたら、楽しいピクニックになっただろう。


 あいつらが、いなければの話だが。


 草原の各地にイノシシみたいな生物や、デカいウサギみたいな生物がいる。


 もしかしなくても、あいつらが敵なのだろう。


 本当にうじゃうじゃいるな。

 あの口の悪い天使の言った通りだ。


 ちょっと怖くなってきたのだが。

 だけど、良い人生と超能力のためにも、がんばらないとな。


 よし、やるぞ!!

 カードを探すぞ!!


 そうは言っても、いったいどこにカードがあるのだろうか?


 見渡す限り、草と木だからな、手掛かりがなさ過ぎる。


 目立っているものと言えば、所々にある木だな。

 木の上とか、陰とかに隠してあるのか?


 いや、待てよ。


 意外と灯台下暗しで、足元にあったりして……


 あっただと!?


 ええ!?


 な、なんだと……!?


 こんなあっさりと見つかるものなのか!?


 カードの色が草の色と似ているから、ちょっと分かりにくいけど簡単に見つかったぞ。


 神と天使どもは、こんなので良いのか?

 こちらとしては、ものすごく楽で良いけど。


 ところで、これ何のカードだ?


 種族、ししゃも、と書いてある!?


 な、なんだと……


 また、お前か!

 お前、俺と縁があり過ぎるだろ!?


 どういうことなんだ!?


 俺は呪われているのか?

 ししゃもの呪いなのか!?


 勘弁してくれよ!!


 とりあえず、このカードは持っておくか。

 何かの役に立つかもしれないしな。



 さあ、次に行こう。


 どこを探そうか?


 とりあえず、木の周辺を探してみようか。


 念のために足元にも注意しながら進もう。


 またカードがあるかもしれないしな。



 あ!?


 しまった!


 足元ばかり見ながら歩いていたら、イノシシみたいな生物の近くに来てしまった。


 しかも目と目が合っちゃったよ。


 これは恋ではなく、戦闘が始まるのか?


 イノシシの方は戦うつもりのようだ。


 鳴き声を上げて、俺を威嚇している。


 仕方ない、戦うか。


 俺は剣を抜いて構えた。


 イノシシが突進して来た。

 まさにイノシシの戦い方だな。

 文字通りの猪突猛進だ。


 速度は、かなり速い。

 だが、この程度なら対処できる。


 訓練場にいた魂たちの動きの方が、ずっと速かったからだ。


 俺は身体能力を強化し、素早く左に移動し、イノシシの突進をかわす。

 それと同時に剣を振り上げる。


 そして、首のあたりを目がけて振り下ろす!


 もちろん剣の方も強化してある。


 イノシシの頭を斬り落とした。


 修行のおかげか、はたまた強化のおかげか、分からないけど、とにかくサクッと斬れたな。


 そういえば、首を斬ったのに、斬り口から血が出ていないな。


 流血だの、グロテスクだの、スプラッターだのが得意ではないので、ちょっと安心した。


 その後、イノシシは光の粒子となって消えた。


 おお!

 まるでゲームの敵みたいに消えたぞ。


 こいつらは生物みたいだけど、まったく違う別の何かなんだろうな。


 命を奪った罪悪感とかを感じずに済むのはありがたい。


 そして、イノシシのいた場所にカードが残っていた。


 敵を倒しても、カードが手に入るということか。

 敵を倒すメリットはあるんだな。


 さて、いったいなんのカードだろうか?


 こ、これは!?


 なんと……


 種族、ししゃも、と書いてある。


 また、オマエなのか!?


 魚って、もっとたくさんの種類がいるだろ!?

 なんで同じ魚に、こんなに出会うんだよ!?


 俺との縁が、あり過ぎだろーー!?


 俺は心の中で叫んだ。


 実際に叫ぶと、敵に見つかって襲われるからだ。

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