第100話 世の中そんなに甘くない
気が付くと、見覚えのない場所にいた。
白を基調とした広めの空間、西洋風の内装の部屋の中だ。
そして、近くに見知らぬ美女がいた。
水色の髪と瞳をしている、優しそうな女性だ。
誰だ、この人は?
……ああ、そうか、この人が母親なのかな?
ん?
近くに男性もいる。
こっちが父親か?
水色の髪と瞳をしている、知的そうな印象を受ける美男だな。
この星の人の髪と瞳は、こういう色なのか?
今の俺も、あんな感じの髪と瞳の色なのかな?
まあ、そんなことは、どうでもいいか。
それよりも、俺の生誕を喜ぶべきだよな!
おめでとう、俺!!
さあ、新しい人生をがんばろう!!!
まずは、何をすべきかな?
やはり、超能力の修行か?
それとも、勉強をすべきか?
うーむ、やるべきことがたくさんあるなぁ。
夢と希望にあふれていて、素晴らしいぞ!!
……そんなことを考えていたら、眠くなってきた。
赤子の体だから、仕方ないか。
まずは寝よう、寝る子は育つというし……
俺の新しい名前が分かった。
セイヤ・エオスターというそうだ。
名前がセイヤで、家名がエオスターになる。
って、おい、ちょっと!?
名前が変わってないじゃないか!?
どういうことなんだ!?
この名前に、何かの呪いがかけられているのか!?
まあ、おそらく偶然だろう。
……そうだよな!?
うん、そうだと思おう。
今の俺は、良い人生を送るために勉学に励んでいる。
新しく覚えた超能力の検証もやっている。
両親は良い人たちで、積極的に協力してくれる。
さすがは親の数値が最高の両親だ。
結構裕福みたいだし、良い環境だな。
恵まれているなぁ。
ああ、がんばって良かった。
それと、カナも俺と同じ日に生まれたそうだ。
俺の家の近くに住んでいる。
よく一緒に遊んだり、勉強したりしている。
これが前世の良縁の効果なのか。
すごいものだな。
カナの新しい名前は、カナリーナ・レウヘントだそうだ。
前の名前と似ているな、これも前世の良縁のせいなのか?
まあ、考えても分からないから、どうでもいいか。
容姿の方は、さすが外見の数値が最高だというくらいの美少女だ。
魂であった頃の姿を、そのまま幼くしたような感じだ。
俺は順調に成長して、10歳になった。
ただ最近、おかしなことが起こって悩んでいる。
それは変な夢を、よく見ることだ。
それは大きく分けて2種類ある。
1つ目は、転生町のどこかを歩いていると、世の中そんなに甘くない、と書いてあるカードを拾う、という内容のもの。
2つ目は、取引所の天使が出て来て、ダークジヨヤジレ星の値下げが決定する、という内容のものだ。
お値段は制限時間100万年から、1年になっていた。
おい、ちょっと!?
下がり過ぎだろ!?
大暴落だぞ!?
いったい、なんなんだこれは!?
不吉過ぎないか!?
なんだか嫌な予感がするぞ!?
気のせいだよな!?
もちろん、この予感は当たりましたよ!
なんと言っても、世の中は、そんなに甘くないからな!!
くそったれが!!
なんと魔王が復活したらしい。
魔王の目的は人類を全滅させて、この星を支配することだそうだ。
ニュース番組に出ているコメンテーターが、そう言っていたぞ。
なんだそれは!?
怖過ぎないか!?
そのため、魔王は手下を派遣して、世界の各地を占領し、拠点を作っているらしい。
なんということだ!?
平和な良い星と聞いていたから、ここに生まれたのに!?
なんでこうなるんだよ!?
おのれ、神に天使め!!!!!
そして、とうとう俺の家の近くに魔王の手下が、やって来てしまった!?
魔王の手下、名前は
なんでそんな名前なんだ?
魔王の手下だから、魔族じゃないのか?
そんなのどうでもいいことか。
その笑死族という連中は、奇抜というか、珍妙というか、まあ、とにかく、そんな姿をしている。
この星の人たちは笑死族を見ると、なぜか笑い始める。
そのまま放っておくと、死ぬまで笑い続けてしまうのだ。
なんだそりゃ!?
特殊な魔法でも使っているのか!?
まあ、もっとも、この星の人たちは元から笑いへの耐性が、ものすごく低いんだけどね。
うちの両親も、くだらないダジャレで、すぐに大笑いするし。
もちろん俺は笑死族を見ても、そんなことにはならなかったぞ。
生まれる前に、お笑い担当のくだらないダジャレに、さらされ続けたからな。
それに超能力もあるし。
なので今更、身長は成人男性くらい、赤い髪のモヒカンのカツラを付けていて、赤いフンドシを締めているスケルトンを見ても別になんともないぞ。
目の前にいるのに、まったく笑っていないからな。
どういうことかと言うと、両親と避難している最中に笑死族に見つかってしまったのだ。
モヒカンスケルトンは両手を上げて、腰を左右に振るという、変な踊りをしている。
暴力は振るってこないんだな。
あ、父さんたちが腹を抱えて笑い出したぞ。
効果は抜群だ!!
抜群過ぎて、父さんたちの方が笑えるくらいだな。
おっと、早く倒さないと、父さんたちが笑い死んでしまいそうだな。
俺はハイトンファーを召喚して、モヒカンスケルトンの頭をぶん殴った。
モヒカンスケルトンの頭部が砕けた。
その後、全身が崩れ去った。
これで倒したのか?
転生前と違って、光の粒子になって消えたりはしないんだな。
粉々になった骨が残っている。
ついでにカツラとフンドシも、そのまま残っている。
これって、もしかして戦利品だったりするのか?
どこかで売れるのかな?
せっかくだから、拾っておこうか。
あ、またモヒカンスケルトンが来た。
今度はショッキングピンクの、カツラとフンドシだ。
わざわざ色を変えているなんて、外見を気にするオシャレな連中なのか?
まあ、どうでもいいか、倒してしまおう。
その後、カナと合流して襲ってきたモヒカンスケルトンを、すべて倒した。
どのモヒカンスケルトンも、笑わせるために変な踊りをするだけで、攻撃をしてこないから楽勝だった。
こいつらは、お笑いに特化し過ぎなのではないか?
笑わない人が出るとは思わなかったのか?
まあ、俺にとっては都合が良いから、どうでもいいけどな。
さて、笑っている人たちの救助をするとしようか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます