第99話 カードを選ぼう

 町に着いた。


 夜だったし、疲れていたので、取引所には行かずに温泉旅館に泊まった。


 行くと天使に急かされて、うるさいからな。



 翌朝。


 カナが、今度は転生町の中を遊び尽くそうと言い出した。


 そういえば、まだ行っていない場所があったな。


 せっかくなので、行ってみることにした。



 それから1週間かけて、町の中で遊びまくった。


 とても楽しかった。


 カジノだけは、中を見物するだけだったがな。


 ギャンブルは、もうしないのだよ。


 さて、これで俺もカナも、この場所への未練はなくなったぞ。


 さあ、取引所に向かおうか。



「いらっしゃい~、あら、久しぶりね。ようやく、決める気になったようね」


 取引所の天使に、そう言われた。

 心を読まれたようだ。


「そうだよ、何かオススメのカードはないか?」


「どれもオススメよ、さっさと選んでね~」


 全然、参考にならないな。


 まあ、良いか、超能力のカードのコーナーに行こう。



 うーむ、たくさんあるなぁ。


 サイコキネシスとか、テレパシーとか、よく知られていそうなものから、腹が大音量で鳴る能力なんていう、需要があるのか分からないものまで、いろいろとあるぞ。


 どれにしたら良いのだろうか?



 え!?

 これは!?


 塔父ちゃん合塔!?


 な、なんだこれは!?


 これは五重塔父ちゃんが、使っていたヤツじゃないか!?


 なんでここで売っているんだよっ!?


 訳が分からないぞ!?


 使ったら、どうなるんだ!?


 塔父ちゃんと合体するのか!?


 ちょっと、どこかに効果の説明とかないのか!?


 あった!


 というか、説明が欲しいと思ったら、空中に表示された。


 素晴らしい、とても気が利くな。


 さっそく読んでみよう。


 塔父ちゃんと合体できる、解除もできる。


 これしか書いていないぞ!?


 不親切じゃないか!?


 合体後はどうなるんだよ!?


 まあ、買わないから、どうでもいいけどさ。


 迷究極エヴォリューション、ハイ搭乗、自極チェンジまであるのか。


 効果は、進化する、何かと融合する、何かに変化する、としか説明されていない。


 不親切だな。


 いらないから、特に問題ないけどな。



 他には、何かないかな?


 お笑い担当の天使から、1日1回、脳内にダジャレが送られてくる能力!?


 お値段、制限時間1000兆年!?


 なんだこりゃあ!?


 いらねぇだろっ!!

 こんなふざけた能力まであるのかっ!?


 神と天使は、こんなの放っておいて良いのか!?



 これは役に立つかもしれないな。


 お金のにおいが分かる能力だそうだ。


 人間なら、お金がいらないなんてことはないと思うからな。


 ちょっと説明書を読んでみるか。



 お金のにおいが分かるようになる。


 稼ぎ時は分からない。



 そう書いてあるぞ。


 ダメじゃないか!?


 お金自体のにおいが分かっても、落ちているのを拾えるくらいだろっ!?


 必要なのは、稼ぎ時の方に決まっているだろうに!?


 これは不要だな。



 おっ、これは!?


 神の祝福、と書いてあるぞ。


 なんかすごそうだな。


 どんな効果なんだ?


 説明書を読んでみようか。



 来世で、勝ちまくりモテまくりな一生を送れます!!


 使用者から、喜びの声が続々と届いております!!


 神の祝福のおかげで、不幸のまったくない一生でした。


 神の祝福のおかげで、天敵にまったく襲われない平和な一生でした。


 神の祝福のおかげで、国が繁栄できました。



 な、なんだ、この怪しい広告みたいな説明は!?


 ウサンクサ過ぎるだろっ!?


 これはやめておこう。



 これは!?


 ヒーローになる能力だと!?


 なんだそれはカッコ良さそうじゃないか!?


 どんな能力なんだ!?


 説明書を読んでみよう。


 ヒーローにふさわしい戦場に恵まれる、と書いてある。


 え!?


 おい、ちょっと、待て!?


 これは、この能力自体が争いの元になるってことなのか!?


 そこまでして、ヒーローになりたくないぞ!!


 これはダメだな!!



 全然、まったく、何も決まらないぞ。


 俺は、いったいどの超能力にすれば良いんだ!?


 ああ、俺は何を求めていたんだ?


 そういえば、なんかカッコイイ超能力が欲しいとしか思っていなかったような……


 カッコイイって、いったいなんなのだろうか?


 俺は、ものすごくあやふやな考えで動いていたんだな。


 我ながら、あきれてしまったぞ。


 うう、どうしようか?


「おおっと、どうやら迷っているようですね~!!」


「カッコイイとは何か?いやあ、哲学的ですねぇ」


 え?

 実況と解説?


 なぜここに?


「私が召喚しました。セイヤが悩んでいたようなので」


 カナが気を遣ってくれたのか。


「そうだったのか。わざわざ、ありがとう」


 ところで、なぜこいつらを召喚したのだろうか?


 うーむ、このあたりの感覚は、よく分からないな。


 まあ、良いか。

 せっかくなので、実況と解説のカッコイイとは、何かを聞いてみよう。


「おおっと、質問されましたよ!カイセツボネさん!」


「カッコイイですか?努力をして、何かを成した皆さんは、すでにカッコイイと思いますよ。超能力とか関係ないんですねぇ」


 そうなのか?


 確かに、そういうものなのかもしれないな……


「では、カイセツボネさん、彼らにオススメの超能力はなんでしょう?」


「この神の祝福が、オススメですねぇ」


 なんでだよ!?


 そんなウサンクサイものは、いらないよ!?


「セイヤ、これはどうですか?カッコイイって、書いてありますよ」


 カナが何かを指差して言った。


 どれ、ちょっと見てみるか。


 真面目な天使が選んだ、カッコイイ超能力セット?


 確かに書いてあるな。


 説明書を読んでみようか。


 なんかカッコイイ色をしたオーラが出る能力。

 さまざまな耐性を得る能力。

 燃費が良くなる能力。


 この3つがセットになったものなのか。


 各能力の説明書も見てみよう。



 オーラが出る能力は、名前通り体がオーラに包まれる能力のようだ。


 そのオーラに包まれると、身体能力強化と、所持品の能力強化と、防御能力が合わさったような効果があるのか。


 オーラを他人にも見えるようにできて、色も変えられるのか。


 カッコイイ能力ではあるな。



 耐性を得る能力は、名前通りだな。


 病気などになりにくくなるそうだ。


 地味だけど有用な能力だな。



 燃費が良くなる能力は、超能力を使っても腹が減りにくくなるそうだ。


 後、疲れにくくもなるそうだ。


 これも、今の俺たちには重要だな。


 ボスを召喚すると、かなり腹が減るし。



 お値段は、制限時間10京年だそうだ。


 これは俺たちにとって、重要なものがそろっているセットだな。


「おおっと、これはお得ですね!!」


「かゆいところに手が届いている、お得なセットですねぇ」


 実況と解説も同じ意見か。


 なら、これにしようかな?


 うーん、そうだなぁ……


 現地にも、魔法があるようだし、こういう便利な能力の方が良いのかもしれないな。


 よし、これに決定しよう!!!


「では、私もこれにしますね!」


 カナもこれにした。


「それでは皆さん、我々は、おいとまさせていただきます」


「さようなら」


「アドバイス、ありがとう!!」


 実況と解説は帰って行った。



 それでは、さっさと生まれろカードと交換しよう。


 あっ、その前に持っている剣とかを売ってしまおう。


 生まれたら、どうせ使えなくなるしな。


 俺たちは所持品を、すべて売却した。


 そして、真面目な天使が選んだ、カッコイイ超能力セットを手に入れた。


 俺とカナは、3つの超能力を覚えた!!


「さあ、生まれてもらうわよ」


 取引所の天使がそう言った。


 いよいよか、感慨深いな。


 おっと、お礼くらいは言っておかないとな。


「いろいろと世話になったな。ありがとう」


「ありがとうございました」


「良いのよ。仕事だからね。がんばって良い来世を送りなさい」


 天使がそう言った直後、体が宙に浮くような感覚とともに、俺の意識は途絶えた。

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