第98話 増え過ぎどうくつ

 茶色の魔法陣に入った。


 転送された場所は、相変わらずの洞窟だ。


 さあ、先に進むか。



 この場所は、銅ちゃんと窟ちゃんばかり出てくるなぁ。


 ただ、この2体にもバリエーションが、いくつかあるようだ。


 銅ちゃんには、茶色の銅の他に、白銅、黄銅、青銅タイプがいた。


 窟ちゃんには、革靴の他に、スニーカー、ハイヒール、サンダル、ブーツタイプがいた。


 強さは、どれも同じくらいだった。

 戦利品は、それぞれのミニチュアだった。



 銅ちゃんと窟ちゃんと戦いながら進んで行く。


 そして、4と書いてある看板の近くの魔法陣に入った。


 そこには、広大な空間があった。


 ここは洞窟の大部屋のようだ。


 そこで、妙な敵に出会った。


 西洋風の鎧の胴体部分に、人間の手足が生えている化け物だ。


 鎧の色や質感が、銅製のものに見える。


 銅製のように見えるロングブーツを履いている。


 身長は4メートルくらい。


 まるで銅ちゃんと、窟ちゃんを合体させたような敵だ。


 見覚えのない敵なので、実況と解説を召喚して聞いてみた。


「出ました!あれは大銅窟だいどうくつちゃんさんですね!!」


「洞窟にいる銅製の鎧と靴だから、この名前なんですねぇ。洞窟とかけたダジャレというわけです。いやあ、実に見事なダジャレですねぇ」


 いやあ、実にひねりのない、そのまんまな名前だなぁと思うぞ。


 さっさと倒してしまおうか。


 俺たちは、剣を抜いて近付いた。



 突然、大銅窟ちゃんの周囲に、大量の鳥が現れた。


 な、なんだ!?

 いきなり現れたぞ!?


 もしかして、大銅窟ちゃんは召喚ができるのか!?


 全長1メートル弱くらいの、黒色と茶色の鳥の2種類いる。


 黒い鳥たちは、翼を広げて威嚇しているようだ。


「おおっと、出ましたよ!あれは怒鵜九二どうくつさんと、土鵜九二どうくつさんですね!!」


「怒っている鵜と、土で作られた鵜が92匹ずついるから、この名前なんですねぇ。洞窟とかけたダジャレというわけです。いやあ、実に素晴らしいですねぇ」


 鵜?


 川で捕まえた魚を吐き出させられている鳥だったかな?


 って、合計184匹もいるのか!?


 多過ぎだろ!?



 突然、大銅窟ちゃんの周囲に、大量のウサギが現れた。


 全高1メートルくらいで、体はどれも茶色だ。


「おおっと、さらに出ましたよ!あれは怒兎九二どうくつさんと、土兎九二どうくつさんですね!!」


「怒っているウサギと、土で作られたウサギが92匹いるから、この名前なんですねぇ。洞窟とかけたダジャレというわけです。これは実に見事ですねぇ」


 な、なんだと!?


 まだ出るのか!?


 一気に増え過ぎだろ!?



 突然、大銅窟ちゃんの周囲に、大量の芋が現れた。


 直径1メートルくらいのジャガイモのような外見で、どれも空中に浮いている。


「また出ましたよ!あれは怒芋九二どうくつさんと、土芋九二どうくつさんですね!!」


「怒っている芋と、土で作られた芋が92個あるから、この名前なんですねぇ。洞窟とかけたダジャレというわけです。実にエクセレントですねぇ」


 おい、こら、どんだけ増えるんだよ!?



 突然、大銅窟ちゃんの周囲に、大量の人間の眼球のようなものが現れた。


 直径は1メートルくらいだ。


 こいつらも、すべて空中に浮いている。


「またまた出ましたよ!あれは瞳九二どうくつさんですね!!」


「瞳が92体いるから、この名前なんですねぇ。洞窟とかけたダジャレというわけです。いやあ、ワンダフルなダジャレですねぇ」


 ちょ、ちょっと、いつまで出るんだよっ!?


 もうやめろって!!



 突然、大銅窟ちゃんの周囲に、大量の大銅窟ちゃんと同じ姿の何かが現れた。


「出たーー!あれは同九二どうくつさんですね!!」


「大銅窟ちゃんと同じものが92体いるから、この名前なんですねぇ。洞窟とかけたダジャレというわけです。いやあ、素晴らしいダジャレですねぇ」


 な、なんだと!?


 今度は分身か!?


 いったい、いつまで出続けるんだよ!?



 と、止まったのか!?


 これ以上増えないのか!?


 どうやら増えないようだ。


 良かった~。


 って、良くはないか!?


 いったい何体になったんだよっ!?


 実況と解説に聞いてみた。


 本体を含めて、合計737体いるそうだ!?


 増え過ぎぃ!!!!


 やり過ぎだろっ!?


 これを考えた神か天使は、アホなんじゃないのか!?


 おのれ、神に天使め!!!



 ええいっ!!


 こんなのと、まともに戦っていられるか!!


 俺はまかいを投げるぞー!!


 俺とカナは、爆発するまかいを召喚して、投げまくった。


 すべて倒した。

 いやあ、強敵でしたね。


 大銅窟ちゃんは、カードを2枚落とした。


 そこには、超能力、どうくつ召喚、と書いてあった。


 えっ!?

 超能力カードだと!?


 あいつはボスだったのか!?


 いや、まだ先に進む通路があるようだし、違うのか?


 まあ、どうでもいいか。


 せっかくなので、覚えよう。


 俺とカナは、どうくつ召喚を覚えた!!


 これで11種類も、召喚を使えるようになったのか。


 もしかして、俺たちは珍獣召喚を極めてしまったのか!?


 すごいことなのかなぁ?


 まあ、良いか。


 見た目は変だけど、いろいろと役に立つしな。


 では、先に進もうか。



 あ、5と書いてある看板と魔法陣を発見したぞ。


 入ってみようか。


 当然ながら、ボスの部屋に転送された。


 もちろん、ボスは迷急須さんだった。


 いちいち最奥から歩いて戻るのが、面倒だったので倒した。


 さて、これで迷宮を、完全に攻略したことになるのかな?


 これで、この場所に思い残すことはないな。


 では、カードを選んで、生まれるとするか。


 取引所の天使に、急かされまくっているからな。

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