第2話 また来ちゃいました

「お疲れ様です。あなたは死にました。今のあなたは魂です。この場所の説明は必要ですか?」


「いいえ、2度目なので、いらないです」


 また、ここに来てしまった。


 そして、また、あの口の悪い受付嬢の天使がいる。


「かしこまりました。それでは採点を致します」


 生前の採点ね。

 アレの場合は、どんな評価になるのやら。


「終了しました。こちらが評価となります」


 地球出身、名前なしのししゃも。


 死因は他の魚に食べられて死んだのか。

 やはりそうだったか。


 世界を維持するために、その命を捧げるという善行をしたため、評価が大幅に上昇する。


 え?


 食べられると評価が大幅に上昇するのか!?

 世界を維持した、なんていう大層な評価をされるのか!?

 あまりやりたくないけど、今後の参考にしよう。


「では、まずは、あなたがどのように生まれるのかを決めます。来世設定ガチャで」


「また来世設定ガチャか……」


 生物って来世設定ガチャの結果に振り回され過ぎじゃないか?


 結局、親ガチャの名前が変わっただけじゃないか。


 腹立たしいな。


 あ、結果が出たみたいだ。



 星   ……地球。

 種族  ……ししゃも。

 性別  ……雌。

 頭脳  ……2。

 身体  ……1。

 外見  ……1。

 親   ……10。

 超能力 ……なし。

 制限時間……30日3秒。



 は!?


「またししゃも!?しかも、前よりも能力の数値が下がってるし!?」


 どういうことだ!?


 生物って、いろいろな種類がいるだろ!?

 なんで2度続けて同じものになるんだよ!?


「多産多死の生物になる可能性は非常に高いです。数が必要なので」


 なるほど、それもそうか。


 なら魚とか虫とかになって食われて死んで、ここに戻ってくる可能性は相当高いのか。


 ものすごく気が重いんだけど……


「さっさと生まれて食料になってください」


「ひど過ぎっ!?もっと言い方あるだろ!?生き残る可能性もないわけじゃないだろ!?」


 なんて腹立たしいヤツだ!


 神とか天使って、ろくでもないヤツらなのでは?


 こんなんじゃあ、生物なんて、やめたくなって当然だろうが!!


 もっと、やる気の起きるようなシステムを作れなかったのかよ!!


「他に質問は、ありますか?」


「これから何をすれば良いんだ!?」


「チュートリアルがありますが、前回、受けなかったのですか?」


「そんなのあったのか!?受けてないぞ!?」


「なるほど、制限時間が短かったのですね。時間の無駄なので、そのような方にはしません。面倒ですし」


「ひど過ぎない!?職務放棄じゃないのか!?」


「時間短縮テクニックです」


「いや、ひどいって!?」


「合理的な判断ですよ。私は仕事のできる優秀な天使なので」


「自画自賛!?」


「それでは仕方ないので、チュートリアルをしましょう。本当に仕方なくですよ。面倒臭い……」


「どんだけしたくないんだよ!」


「私は忙しいので、無駄は省きたいのです」


「上に文句を言えよ!!労働環境を改善させろよ!」


「なるほど、それも良いかもしれませんね。ご尽力、ありがとうございます」


「そうしとけよ」


「では、チュートリアルを始めます。この説明書をお読みください。以上です」


「それだけっ!?」


 説明書を渡して終わりなのか!?

 これを省いて、いったいどこが時間の節約になるんだよ!?


 お前、ただの怠け者だろ!?


 もう、どうでもいいか。

 さっさと読んでしまおう。


 この世界には、設定を変えたり、能力の数値を上げたりできるカードがあるのか。


 それらが、どこかに隠されているから探せと。


 それを手に入れるのが、準備期間であるというわけだな。


 そういえば……


「ところで、来世設定って、曖昧な項目だらけなんだけど、どういうことなんだ?頭の良さや身体能力を数値化って、いったいどんな基準なんだ?」


「不明です。その点に関しましては、すべて神がお決めになられたので、私には分かりません」


 天使は管轄外なのか。

 まさに神のみぞ知るというヤツか。


「能力の数値だけど普通の人は、いくつくらいあるんだ?」


「そうですね。3か4くらいが普通ですよ」


「そうなのか。ありがとう」


 3、4で普通なら10になったら、どのくらいすごいんだろうか?


 そういえば、今回も前回も親の数値が10だったな。


 これはいったい、どういうことだ?


 ああ、そうか、多産多死の生物は生き残っただけでエリートなのか。


 ダメな俺みたいなヤツは、すぐに食われるわけだ。


 過酷な世界だ。



 まだ説明書に続きがある、読んでみようか。


 え?


 カード探しを妨害する敵がいる!?

 倒すと良いことがあるかも、と書いてある!?


 カード探しって、戦闘もあるのか!?


「あの、ここに敵がいるって、書いてあるのだが?」


「はい、います。各地にうじゃうじゃといますよ」


「う、うじゃうじゃ!?あの、俺、戦ったことないんだけど……」


「はぁ、やれやれ、軟弱者ですね」


「うるさいぞ!!」


 こいつは、いちいち腹立たしいな。


「あちらに戦闘訓練ができる場所があるので、そこで戦闘のチュートリアルを受けてください」


「分かったよ」


 いきなり投げ出されるわけではないのか。


 神や天使にも少しは良心があるんだな。


 さて、戦闘のチュートリアルとやらを、受けに行ってみようか。


 ……また説明書を渡されて終わりじゃないよな?

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