第121話 勇者VS魔王の究極奥義

 あたりが静けさに満たされる。


 ……何も起こらないな?


 本当にやったのか?



 残念ながら、世の中は、そんなに甘くはなかった。


 魔王の拠点が白い粉状になり、形を成していく。


 やはりまだ生きていたのか!?


「ついに出ました!!あれは魔王さんの第4形態です!!!」


「いやあ、これは大きくなりましたねぇ」


 いやいや、あれはデカくなり過ぎだろっ!?


 そこには身長100メートルくらいある魔王がいた。

 

 体の構造は変わっていない。


 いい加減、そのとぐろを巻いた茶色の蛇の姿はやめて欲しいぞ!?

 

 下品過ぎるだろっ!?


 魔王の威厳が損なわれると思わないのかよっ!?


「おのれ!我が城を!許さんぞ、勇者ども!」


 ええっ!?


 俺たちが壊した部分はあるけど、ほとんどは第4形態になるために、自分で壊したんだろ!?


 責任をすべて押し付けるのはやめろ!!


「我が究極のギャグで笑い殺してやろう!!!」


 な、なんだと!?

 究極のギャグだと!?


 いったいどんなものなんだ!?


「おおおおおおーーーーー!!!!!究極真奥義きゅうきょくまおうぎ!アルティメットギャグアーマー!!!」


 なんだそれは!?


 魔王がそう叫ぶと、突然魔王の体が、巨大な赤い球体の光に包まれた。


 あれが究極真奥義なのか!?

 いったい何が起きるんだ!?


 そして、その光がはじけた。


 ええ……

 ナニアレ?


「きたーーーーー!!!あれは究極真奥義、アルティメットギャグアーマーを身に着けた魔王さんです!!!」


「いやあ、なかなか、お似合いですねぇ」


 そこにいたのは、巨大な白い紙オムツを身に着けた魔王だった。


 蛇の部分がスッポリと覆われている。


 これが究極のギャグなのか!?


 お前は、それで良いのか!?


 ハッキリ言って、くだらなさ過ぎるぞ!!!


 それに、すぐにオムツを交換しなければいけない状態だしな!!


「な、なんだと!?我が究極真奥義を見ても、無反応だと!?グ、グアアアアーーーー!!!!」


 なんだか魔王が苦しんでいるぞ。


「決まったーーー!!!挑戦者たちが、魔王さんの笑死力のギャグを無反応で切り抜けましたーーーー!!!!」


「いやあ、これは見事ですねぇ」


 魔王でもギャグが無反応だと、ダメージを受けることになるのか!?


 笑死力のギャグって、本当に捨て身の技だよな。


 なんでこんなものを使ってくるのだろうか?


 まあ、どうでもいいか。


 今がチャンスだからな!!


 出し惜しみなんてせずに、確実にとどめを刺してやるぜ!!


 俺は迷究極第3形態強制移行光線発射装置を、すべてのボスに向けて発射した!!


 すべての珍獣たちが、光に包まれた。


「おおっと、皆さんが第3形態になるようです!!!」


「いやあ、どうなるのか、実に楽しみですねぇ」


 訂正します。

 実況と解説以外の珍獣たちが、光に包まれたでした。


 そして、すべての光が集まっていき、急激に大きくなっていく。


 その後、なぜか光が10個に分かれて、はじけた。


 なんでわざわざ分かれるんだ?



 ああ、なるほど、そういうことなのか。


 そこには、10体の不審者がいた。


 金色の全身タイツを着ていて、頭に朱色の目出し帽をかぶっている。


 上半身には、タイツの上からTシャツを重ね着している。


 そのシャツには、山、森、草原、塔、廃都、城、魔界、迷宮、地獄、墓場という文字と、その場所の絵が描かれている。


 身長は80メートルくらい。


 体型は、タイツの上から分かるほどの筋骨隆々ぶりだ。


「出たーーーー!!!!あれが皆さんの究極の第3形態です!!!」


「いやあ、これは実に壮観ですねぇ」


 あれが究極なのかー。


 それで良いのか、うちの珍獣ども!?


 まあ、もう、どうでもいいや!!!


 さあ、いけ、みんな!!!

 魔王にとどめを刺すんだ!!!


 10体の珍獣たちが、魔王を袋叩きにして倒しました!!!


 いやあ、とても素晴らしいですね!!!



 さて、後は魔王の遺体を処分するだけだな。


 俺たちは魔王の近くまで来た。


「う、うう、お、おのれ……」


 ん?

 魔王は、まだ意識があるようだ。


 しぶといなぁ。


「み、見事だ、勇者ども。だが我は消えん、笑いを求める心がある限り、いつの日か必ずよみがえるであろう……」


 魔王はそう言って、動かなくなった。


 うん、それは知っていたぞ。


 先代の勇者にも、そんなことを言ったらしいな。


 しっかりと本に書き残されていたぞ。


 ただ、この星ではその本は失われてしまったようだけどな。


 転生町で調べておいて良かった。



 では、魔王を処分するか。


 実は魔王を、もうこの星に復活させない方法を考えてあったのだ!!


 さっそく実行しよう!!


 まずは魔王の遺体を水の中に沈める。


 実は魔王は、長時間水にさらすと溶けるそうだ。


 見た目通りのアレだからな。


 先代の勇者は溶けた魔王を小分けにして、容器に入れた。


 それを魔王を封印したと表現して、各地の信用できる人間に預けて管理してもらったそうだ。


 残念ながら、全部失われて魔王を復活させてしまったけどな。


 まあ、長い時間が経過していたのだから、仕方ないのかもしれないけれど。


 時の流れは無常だな。

 諸行無常ってヤツなのかな?



 おっ、魔王が溶けたようだ。


 では、ここであるものを召喚しよう!!


 それは名吸水ポンプだ!!


 溶けた魔王をこのポンプで吸い上げて、元の場所に帰してしまおう。


 そうすれば、魔王はこの星からはいなくなるからな!!


 魔王の溶けた水は、転生町のどこかにあるスタッフルームで保管することになるそうだ。


 実況と解説が言っていたから、間違いないだろう。


 おっ、全部吸い終わったぞ。


 そして、ポンプを元の場所に帰した。


 これで完全勝利だな!!


 さあ、帰るとするか。

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