第94話 地獄の長

 家事獄の出口の扉を開けた。


 そこは神殿の内部のような場所だった。


 いつものボス部屋という感じのする場所でもある。


 白で統一された空間に、大きな柱が何本も等間隔で並んでいる。


 床には赤いカーペットが敷いてある。


 壁には人骨が彫刻が施されている。


 ここだけは地獄特有みたいだな。


 死をモチーフにした場所って感じだ。


 なんだか死神が住んでいそうな場所だな。


「ようこそ、神に盾突く、欲深き愚かな魂たちよ」


 上の方にあるスピーカーから声が聞こえてきた。


 低くて渋い男性のような声だ。


 お、ボスのセリフだ。


 今度は本物なんだろうな?


「さあ、奥まで来たまえ、この私が直々に相手をしてやろう」


 念のために、準備をしようか。


 さて、誰を召喚しようか?


 いつも通り各地のボスと、波カバで良いかな。


 召喚をして、休憩した。


 よし、準備完了だな。

 いざ、出陣だ!!



「皆さん、こんにちは、私は実況の、地獄のジッキョウボネです。よろしくお願いします。そして、こちらが解説の、地獄のカイセツボネさんです」


「よろしくお願いします」


 実況と解説のスケルトンがいた。


 なんでいるんだよ?


「おおっと、カイセツボネさん、挑戦者が現れましたよ!」


「地獄でひどい目に遭ったような顔をした連中ですねぇ」


 なんでそんなこと分かるんだよ!?


 まあ、どうでもいいか。


 さっさとボスのところに行こう。


 こいつらは、多分無害だ。


 たいして強くもないし、襲われても対処できるだろう。



 奥には祭壇のような場所があり、その上に立派な玉座があった。


 そこには、体付きが良くなった疑似獄がいた。


 ただ封筒には、辞表の極み、と書いてあった。


 辞表の極みって、なんだろう?


 意味が分からないな?


 あれを出したら、絶対に仕事をやめれるのか?


 いや、それは普通の辞表でもできるか。


 辞表の極みとは、いったいなんなのだろうか?


 そんなことを考えていると、実況がしゃべり出した。


「それでは、ご紹介しましょう!地獄の長、辞表の極み・辞極じごくさんです!!」


「辞表を極めた存在だから、この名前なんですねぇ。地獄とかけたダジャレというわけです。いやあ、実にハイクォリティなダジャレですねぇ」


 辞表を極めた存在!?


 だから、なんだそれは!?


 訳が分からなさ過ぎるぞ!?


 まあ、もう、どうでもいいか。


 多分、ダジャレにしたかっただけなのだろう。


「よくぞ、ここまで来た。私が地獄の長である辞極だ!」


 ふと思ったのだが、疑似獄って結構ボスに似ていたんだな。


「神のおぼし召しに歯向かう愚物である、なんじらを処罰してくれよう。さあ、生まれてもらうぞ。愚かなる魂たちよ」


 いつもの使い回しセリフを言って、辞極が立ち上がった。


 身長は4メートルくらいだな。


 人間の手足の部分は筋骨隆々だ。


 無駄毛はまったくなし。

 キチンと処理しているのか?


 こいつも結構強そうだな。


 気を引き締めてかかろう。


「ゆくぞ、魂たちよ!!来い!耳五九じごく寺五九じごくよ!!」


 なんだと!?

 召喚なのか!?


 辞極の両手に長い棒のようなものが現れた。


「出ました!あれは耳五九に寺五九です!!」


「耳と寺のミニチュアが59個並んでいるから、この名前なんですねぇ。地獄とかけたダジャレというわけです。いやあ、実に見事なダジャレですねぇ」


 耳と寺!?


 確かによく見ると、そんな感じだな。


 耳五九の方は、さまざまな生物の耳が並んでいる。

 寺五九の方は、寺っぽく見える建物が並んでいる。


 また、くだらないものを作ったものだなぁ。


「まだだ!来い、児五九じごくよ!!」


 え!?

 まだ来るのか!?


 辞極の周囲に、辞極を小さくしたようなヤツが多数現れた。


 身長は2メートルくらいだ。


「おおっと、さらに出ましたよ!あれは児五九さんたちですね!!」


「児が59体いるから、この名前なんですねぇ。地獄とかけたダジャレというわけです。いやあ、素晴らしいダジャレですねぇ」


 あんなデカいのに、児と言い張るのかよっ!?


 しかも、59体もいるだと!?


 面倒くさいな!?


「さあ、勝負だ!魂たちよ!!」


 辞極と児五九たちが、いっせいに向かって来た。


 向かって来るということは、遠距離攻撃手段はないのかな?


 ならば、ここは先手必勝だな。


 俺は魔階段を召喚し、投げ付けた。


 辞極たちの付近で爆発が起こる。


 さらに、マカイーグル、山山、波カバ、迷急須に攻撃をさせた。


 銃弾、ミサイル、岩石、水の球、ウォーターカッターが向かって行く。


「ぐああああーーーー!!!!」


 辞極たちの叫び声が聞こえる。


 さあ、これでどうだ!!


「くっ、まだだ!!」


 辞極は、あまりダメージを受けていないようだ。


 児五九たちは、かなり数が減っている。


 辞極は児五九たちを盾にしていたのか?


 まあ、どうでもいいか。


 ジャンジャン撃て撃てーー!!


 マカイーグル、山山、波カバ、迷急須は、さらに撃った。


 児五九たちをすべて倒し、辞極ダメージを与えたようだ。


「ぐううっ、おのれ、こうなったら……」


 おっ、いつものヤツか?


 第1形態は完勝だったな。


 俺たちも強くなったもんだ!


「おおおおおーーーーー!!!!!自極じごくチェンジ!!!!!!」


 辞極が白い光に包まれていく。


「とうとう出ました!あれは自極チェンジです!!」


「自分を極めて変化するから、この名前なんですねぇ。地獄とかけたダジャレというわけです。いやあ、実にエクセレントですねぇ」


 そうなのか。


 なんかすごそうだな。


 というか、すでに辞表を極めているのでは?


 まあ、どうでもいいけど。


 そして、辞極を包んでいた光がはじけた。


 な、なんだあれは!?

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