エピローグ もう一つの結婚式を マエル視点(2)
「………お母様。すでにご存じだとは思いますが、この方がマエル様です。とてもお優しくて、大好きな。わたしの、旦那様なのですよ」
「こうしてご挨拶を行うのは、初めてですね。フェリ様、マエル・ザルテーラスと申します。今日まではロゼの婚約者、今日からはロゼの夫となりました」
キスを済ませるとロゼが紹介を行ってくれて、それに合わせて僕は片膝をつく。
お義母様。あのような辛い時間は、二度とやって来ません。貴方の大切な宝物は、引き続き僕が護ってまいります。ですのでどうか、ご安心を――
《ええ、安心しておりますわ。マエル様。今後とも娘をよろしくお願い致します》
――墓石を見上げて、誓いを立てている時だった。頭の中に落ち着いた声が響き渡り、穏やかに微笑んでいる女性の姿が――温かい瞳を持つロゼに似た女性の姿が、ふわりと浮かび上がって消えた。
……これは……。そういうこと、なんだろうね。
「マエル様……っ。今、お母様のお声がしました……!」
「…………ああ、僕にも届いたよ。喜んでくださり、安心してくださったみたいだ」
ハッとなっているロゼに小さな頷きを返し、そんな彼女をそっと抱き締めた。
「先ほどフェリ様から、『よろしくお願い致します』と頼まれたんだ。……元々そうすると決めていたし、お義母様と約束をしたからね。いつまでも君を愛し、護り続けてゆく。ロゼ、ずっと一緒に歩んでいこう」
「はい……っ。一緒に、歩んでいきましょう……っ。わたしもいつまでも愛しておりますっ。大好きです、マエル様……っ!」
そうして僕達は再びキスを行い、それは偶然――ではないね。どこからともなく僕達の間に『ユリの花』がいくつも舞い降りてきて、
「マエル様」
「ああ、そうだね。フェリ様が、投げてくださっているんだね」
僕達は今日2度目の式を挙げ、今日2度目のライスシャワーに包まれたのだった。
姉のものを欲しがる性悪な妹に、墓穴を掘らせてみることにした 柚木ゆず @yuzukiyuzu
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