第3話 同時刻~ハズオルエ子爵家邸では~ 妹アメリ視点

「さっき届いたそのイヤリング、綺麗だよね。頂戴」


 お姉様の耳でキラキラした輝きを放っている、薔薇をモチーフにしたイヤリング。わたしをそれを、興奮気味に指さした。


「え……!? どう、して……」

「そんなの決まってるでしょ。気に入ったから、欲しいって言ってるの」


 わたしはキュート系の美少女で、大人っぽい薔薇はあまり似合わない。だけどお姉様がつけているのを見たら、よく見えてきた。

 それに――。ダイヤモンドが散りばめられていて、とっても豪華なんだもん。

 だから欲しくなって、こうして手を伸ばしているの。


「だ、駄目だよ。これは、アンジェリーナ様からいただいたプレゼントで――」

「もらったプレゼントを妹に渡しちゃいけない、そんな法律なんてないよね? それにあの方は国外に居て、お会いすることなんてまずないんだもん。なにも問題はないよ」


 お姉様の、1つ上の先輩――去年学院を卒業された、リンズ侯爵家のアンジェリーナ様。あの方は半年前に、2つ離れた国『エニーク』の侯爵家に嫁がれている。

 昨日はたまたまお家の用事で帰国されていて、その際に購入したってお手紙に書いてあったんでしょ? 今はまた国外にいるんだから、わたしが持ってても困るコトはないでしょ?


「そ、それはそうかもしれないけど……。アンジェリーナ様は、私のために選びこうして贈ってくださ――」

「しつこい。わたしが欲しいって言ってるの。お姉様、ささっと渡して」

「ロゼ、貴方はまた。妹の願いを叶えてあげるのが姉の役目、いつもそう言っているでしょう? 早く渡してあげなさい。ね、あなた」

「そ、そうだな。ロゼ、可愛い妹のお願いなんだ。頷きなさい」


 お姉様がとお母様が来てくれて、傍に居たお父様も同意をしてくれた。

 今回も、形勢は3対1。それに――


「聞き分けが悪いと、貴方の宝物が壊れてしまうわよ? それでもいいのね?」


 ――こっちは、形見を握っているんだもん。お姉様は今まで以上に強く出られなくって、


「…………分かり、ました。アメリ、どうぞ。私の代わりに、使ってください」


 はいっ、わたしの物になりました~っ。


「よかったわね、アメリ。貴方は何でもものに出来ちゃう子だから、とても似合わってるわっ」

「え~、そうかなぁ? ありがとうお母様っ」


 そっかぁ、そんなに似合ってるんだぁ。

 だったら、決~めたっ。1つだけは許可されてるから、ふふふっ。明日学院につけていって、みんなに自慢して見せつけちゃおっ!


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