第4話 翌日~学院で~ マエル視点(1)
((思った通りだね。案の定、アメリはイヤリングをつけてきた))
次の日――策が動き出して3日目の朝。学院に到着したハズオルエ家の馬車をチェックしていた僕は、彼女の耳元を見て目を細めていた。
これまでアメリはロゼの物を奪ったあとは、ソレを多くの人間に見せたがっていた――夜会や学院につけてきていた。そのため耳たぶでは例のイヤリングが小さく揺れていて、作戦その1の第1段階が達成となった。
「やあ、ロゼ、アメリ。おはよう」
「マエル様。おはようございます」
「マエル様。ごきげんよう」
そこで第2段階を始めるべく歩み寄り、そうするとアメリは恭しくカーテ・シーを行った。
彼女は家族の前とそれ以外では、まるで別人。屋敷外では礼儀正しく真面目なお嬢様に擬態していて、今日も品の良い笑みを振り撒いた。
「こうして学院でお会いできるのは、一週間ぶりですね。先週のお姉様は、ずっと寂しそうでしたので。嬉しいです」
朝の挨拶が済むと早速、心にもない笑顔がやって来た。
影からの情報によると、『ロゼの評判を落としつつ自分の評判を上げ、僕との距離を縮める』作戦が水面下で動いているのに、コレだ。ここまで面の皮が厚い人は、そうそうお目にかかれないね。
「お姉様。大好きなマエル様と過ごすことができて、幸せですね」
「うん、そうだね。前の週は迷惑をかけて、ごめんね。支えてくれてありがとう、アメリ」
「大好きな人にそうするのは、当たり前です。お礼なんて要りませんよ」
形見を使って話を合わせさせているくせに、しれっとこんなことを言ってのける。引き続き内心とは正反対の言動で、着々と計画を進めてゆく。
((でも))
順調なのは、ここまでだ。
「あれ? よくよく見てみると、アメリがつけているそのイヤリングって……」
「え? イヤリング、ですか? こちらが、どうか致しましたか?」
「一昨日私用で出かけていて、その際にルナレイクで旧友――帰国していたアンジェリーナ様と出会ったんだ。その時に選んでいたプレゼントがソレなんだけど、おかしいな? あれは一点ものなのに、どうしてアメリがつけているんだい……?」
僕も同じく、策を実行中でね。たった今から、第2、そして第3段階目が始まるんだよ。
さあ、アメリ。僕の思い描いた通りに、踊ってもらうよ。
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