第4話 翌日~学院で~ マエル視点(2)

『今のお声……。お聞きになりましたか……?』

『え、ええ。盗み聞きするつもりはありませんでしたが……。聞こえましたわ』

『ロゼ様へのプレゼントを、アメリ様が……? どうなっているのかしら……?』


 いつもよりも大きな声を出したから、周囲がしっかりと注目してくれるようになった。

 さて、アメリ。君は、どんな反応をしてくれるのかな?


「………………」


 アメリは青ざめていて、無言。激しく戸惑い、口をあわあわと動かすことしかできなくなった。


「………………っ。………………っっ」


 うん、予想通りのリアクションをありがとう。じゃあイメージ通りに反応してくれたご褒美に、助け舟を出してあげようじゃないか。


「ああ、そうか。分かったよ。それは、そっくりなものなんだね」

「……ぇ? マエル様……?」

「プレゼントを――本物をつけているロゼを見て『綺麗』と思い、お姉さんの真似をしたくなった。だから酷似したものを購入して、身につけているんだよね?」

「……ぇ?? ぇっっ? そっくりっ?」

「え? 違うのかい? 以前そういったことがあったから、今回もそうなのだと思っていたよ」


 あれは婚約する少し前、今から半年くらい前だったかな。アメリがロゼの私物を夜会でつけていたことがあって、『それはロゼの物じゃ?』と。その時に君は、『お姉様がつけているのを見て素敵と思い、似たものを買った』と言い訳していたじゃないか。


「アメリはロゼを慕っているし、そうなのだと思っていたよ。違うんだね」

「ちっ、違くありませ――マエル様の仰る通りですっ。勘違いされているどうしよう! と焦ってしまって、お返事が遅れてしまいましたっ。はい、マエル様。実はそうでして、少し早い誕生日プレゼントとしてお父様に買っていただきました」

「やっぱり、そうだったんだね。ごめんごめん。僕のせいで、余計な混乱を招いてしまったね」


 僕は微苦笑を浮かべながら頬を掻き、腰を折り曲げて謝罪を行う。

 この言い分は嘘で、それを白日のもとに晒すのは容易だ。けれど敢えてそうはせず、この法螺を活かして更に仕込みを行う。


「よくよく考えてみれば、アメリがプレゼントを使うのはあり得ないことだったよね。だってロゼは贈り物を大切にする人で、もしこれが本物ならアメリが奪い取ったことになってしまう。2人は仲良しで、アメリはロゼを慕っているんだ。そんなことがあるはずないよね」

「もちろんですっ。わたしはお姉様を誰よりも尊敬していますっ。大好きな人が嫌がる真似なんて、絶対にしませんっ」


 アメリは即答しながらロゼに抱き付き、全身を使って仲良しアピールを行う。

 うん。そうだね。君は僕だけではなく周囲にも改めて伝えようとして、そういった行動を一生懸命取ると思っていたよ。



 ――自分達が進めている計画と、大きく矛盾してしまうことになる――。



 ついうっかりそれを忘れて、やると思っていたよ。

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