第19話 その後~セレステSide~ 俯瞰視点

「ぁぁぁぁぁ……。あんなことを、しなければ……」


 つい先日までアメリの態度に怒り狂い、暗殺を計画していたセレステ。そんな彼女は今、小さな個室のベッドで蹲っていました。

 セレステの日常が大きく変化したのは、今から10日前でした。



「ニフェエル卿。貴方様のご令嬢が、色々と悪巧みをされているそうですよ」


「こちらが証拠になります。現在は、アメリ親子の殺害を計画。過去にはそのアメリ親子と結託して悪い噂や証拠を捏造し、わたしの婚約者ロゼを貶めようとしておりました」



 突然マエルが屋敷に現れ、当主こと父親に提示したことで状況は一変します。


『各地で噂を立てたり、イジメの証拠を捏造したり。「絶対成功する」という貴方と夫人の言葉を信じて、__・・・・・・・・・・・・アレコレ動きましたのよ?』


 セレステの父は彼女とは正反対な、不正を許さない人間でした。それによって秘密裏に――お屋敷の関係者複数人を金や色仕掛けによって操り動いており、そのため大きな怒りを買うこととなりました。



「マエル殿。愚娘には相応の罪を背負わせ、わたくしも責任を取らせていただきます」

「ニフェエル卿は病で療養しており、把握は不可能。被害者の一人という認識でして、そういったものは不要でございますよ」


「セレステへの対応ですが。ニフェエル卿は真面目な御方ゆえ、厳しく教育されていましたよね?」

「え、ええ。こんな形となってしまいましたが……。そうであると自負しておりました」

「でしたら普通のやり方をとっても改心しないでしょうし、追放したら市井で迷惑をかけかねません。そこで――」



 この国の西部にある、『リンデラッグ修道院』。この国はおろか周辺国の中でも最も厳しい場所に無期限で入院することとなり、当日より厳しい生活が始まっていたのです。


「朝は4時半に叩き起こされて……。貧相な食事を摂って、祈りを捧げて、就寝時間まで奉仕活動を行わされて……。…………嫌……。もう、嫌ですわ……」


 綺麗で高価なドレスではなく、味気なく質素な修道服姿で嘆いて。小さく固いベッドに顔を擦り付けますが、もう二度と当時に戻れはしません。


「ぁぁぁぁぁ……。あんなことをしなければ、お屋敷に居られたのに……!」


 罪なき者を引き摺り下ろそうとしたため、生活は――人生は一変。セレステは一生涯、彼女にとっては地獄のような毎日を過ごす羽目となったのでした――。

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