第5話 把握~前日の出来事~ マエル視点
「……なるほどね。これがアメリ達の計画か」
影を放ってから、1日と数時間が経過した頃。その影達が戻ってきて、僕は自室にて報告書に目を通していた。
『協力しないのなら、愛想を尽かされるようにしてあげるわ』
ロゼにそう言い放った、継母ベル。彼女が水面下で動かしていた作戦は、『妹イジメの捏造』。
姉ロゼは婚約者や周囲から好印象を抱かれるように、長年妹アメリに自分を持ち上げろと命令をしていた――。
アメリは姉を慕うように指示を出されていて、逆らうと二人きりの時に物を投げつけられたり暴力を振るわれたりするから従っていた――。
あまりに怖くて家族にも言えなかったけど、今から4日後に偶々学院内で他の生徒がそんな場面を目撃してしまう――。
その目撃者こと『協力者』は、表向きは優しく正義感の強い格上の貴族令嬢。そのため『わたくしがついているから』と背中を押され、勇気を出して大勢の前で被害を訴えるように決めた――。
そうしてロゼを悪者にして、周囲であり僕が軽蔑するようにする。反対に周囲や僕は被害者であるアメリに同情し、そこを活かして距離を縮めていく。
こういった悪巧みが、動いているようだ。
「いやぁ。ここまでするとは、アメリ達にも困ったものだね」
当主の現在の妻が母親な自分こそが、この家の主役。脇役な姉が良いものを持っているなんてあり得なくって、良く見えるものは全部わたしもの!
そんなお考えを――そんなお考えもお持ちで、おまけに母親はそれを咎めないどころか後押しする。父は父で妻に嫌われたくなくて、見て見ぬふりをする。どうしようもない人間達だ。
「うん。ここまでどうしようもないと、説得なんて不可能だね」
やめましょう。いけないことですよ。僕がそう訴えても、素直に止めるはずがない。むしろ『告げ口したな』とロゼを叱責し、計画が失敗した腹いせに形見が壊されてしまうだろう。
「だから、『やめてもらう』ではなくて『とめる』しかない。ただ」
この計画は、僕が不在の間に――6日前から動き出していて、すでに色々と仕込みが行われている。ロゼがアメリをイジメていた証拠が数点捏造されている上に、数か所で『最近アメリ様の様子がおかしい』『時々、怯えている目でロゼ様を見ているのを見た』などなど――。真実味を持たせる噂が出始めているため、力押しで解決してしまったら、やがて根も葉もない噂が独り歩きする可能性がある。
「貴族は殊更、その手の話が好きだからね。
そのために必要なのは、アメリは自分の意思でロゼを慕っている、という周囲の認識だ。それを得るには、あのイヤリングを使って――
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