第12話 昼休みに潜む、罠 アメリ視点(1)

((よ~っし。そろそろ、セレステ様に会いにいこっと))


 次の日の、午後の1時8分9秒。わたしは教室にある掛け時計でしっかりと時間を確認して、椅子から立ち上がった。


((ボーっとしちゃって、約束の時間から8分も過ぎちゃった。きっとセレステ様は、怒ってるよね))


 格下が待たせてしまうのは大きなマナー違反だし、あの方は格下に振り回されるのを許せない人なんだもん。今頃かなりイライラしてると思う。


((アイディアも持って来てないし……。嫌だなぁ……。怖いなぁ……。会いに行きたくないなぁ――なんちゃって))


 昇降口で靴を履き替えながら震えるお芝居をして、校舎裏を目指しながらにんまりと口を吊り上げる。

 これは夕べお母様と考えた、火をつけやすくするための罠なんだよね~。


((セレステ様は、元々かなり短気な方。そんな人がムカムカしてたら、ますますカッとなりやすくなる))


 そこでまずはこうやって待たせて、より爆発しやすい状態でスタートさせるのですっ。


((セレステ様、ザンネンでしたっ。今のわたし達には、同格のお家がついてるんですよ~っ))


 な・の・で。不安で一杯になってるわたし、貴方に怯えるわたしは、もう居なくって――


「…………わたくし、1時と言いましたわよね? どうなってますの?」


 ――校舎裏に着いてものすごく不機嫌なお顔を見ても、なんにも怖くない。

 血管が浮き出てるっ。ぷぷぷっ。そんな風に思っちゃえるくらい、大したコトのない人なんだよね。


「…………わ・た・く・し、い・ち・じ・と、言いましたわよね? ねえ、どういう事なんですの?」


 はいはい。分かった、分かりました。

 顔芸みたいで面白くってもっと見ていたいけど、まだ爆発しそうにない。このまま放っておいたら、手を出してきそうにないもんね。


((気が短くて偉そうな、生まれだけしか長所のないセレステ様))


 お返事をするから――。わたしの罠に、はまってくださいね?

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