第18話 その後~父・トムSide~ 俯瞰視点

「俺は……なにも、悪くないのに……。どうして、こうなってしまったんだ……」


 ハズオルエ子爵家の領地内にある、僻地。そこに用意された小さな『家』――かつて過ごした屋敷の10分の1にも満たない面積の建物内で、かつて子爵だった男・トムは天を仰いでいました。


「卿だけが表舞台に立っているのは、不自然だ。そこでお前は家督を弟君に譲り、ひとりで静かに暮らしてもらう」


 マエルがトムに命じたものは、隠居でした。

 当然トムは呑めないと抵抗を試みましたが、『逆らえば潰すぞ?』――マエルの殺気を浴びて何も言えなくなり、あの日から5日後に新たな生活が始まってしまっていたのでした。


「俺は、全員を愛していて……。ロゼへの愛より、ベルに対するものの方がほんの少しだけ大きかっただけなのに……。どうして同罪にされて、何もかも失わなければならないんだ……!? なぜなんだ……!?」


 トムは、愚かな男。悪意がなければ罪ではないはず、そう心から思っていました。

 そのためずっとこんな風に感じていて、だからこそ――。



 理解ができないなら、一生自問自答をしているといい。



 マエルは一生涯バカな独り言をひとりで吐き続けられるように、隔離を行っていたのです。


「理不尽だ……! 俺はちゃんと、ロゼを可愛がっていたのに……! 愛があるのなら、そうはしないだろう……! それが、真実なはずなのに……!! なぜだ……!? なぜ誰も同意してくれなかったんだ……!? なぜなんだぁ……!?」


 その質問をする相手は、答えてくれる人は、いません。

 そのためトムは今夜も、頭を掻きむしって絶叫。『自分は悪くない』『正しいのに』を繰り返し、そんな時間は今後もずっと――命が尽きるその時まで、一生涯繰り返されてゆくのでした。



 〇〇



 そして同時刻――。そんなトムであり、ベルやアメリとかつて手を組んでいた人、セレステは――

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